現実は残酷だ

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「あの靴……、葵のでしょ?」  呼吸を落ち着かせる。吐き出してしまった酸素を肺に充填させようと大きく吸って整える。目を覆うように下がってきた髪の毛を手で掻き上げて、視線を落とす彼に向かって問う。  宛もなく雨に打たれていたに私の近くに落ちてきた靴は、いつも葵が履いていた靴と同じものだった。  運動が得意だった葵は、水色に赤のラインが入った運動靴を履いていることを私はずっと見てきた。 「あの靴?」 「え………下に落としたんじゃくて?」  彼は本当に知らなそうな表情で「知らない」と答えた。  少し視線を右に逸らせば、その靴の片方であろう靴が転がっていた。  じゃあ………あの靴は――。
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