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エピローグ
どう後悔しても、何度も涙が流れても……。
もう二度と、葵に会うことはできない。
「俺と……」
だからといって、私達が立ち止まってしまうのは彼女も望んではいないだろう。
あれから気付けば3年という月日が経った。まだこの世の何処かに葵がいるんじゃないか。メッセージが届くんじゃないかと思う日もある。雨降りの中で彼と言い争った光景が昨日のように思えるほどに印象強くて、今後も忘れることはないだろう。
今でも噛み合わなくて争うことはあるけれど、あの日から私達の間には和解するかのような笑顔が溢れるようになった……。
彼はあの後学校を変えたけど、結局は同じ大学で再び出会うこととなった。
春のピンク色は儚く散って、夏に向けて草木が緑色を芽吹かせる頃、私は彼の言葉に向き合うこととなっている。
「付き合ってください!!!」
運命とは何なのか――。
結局、最初から私達はこうなる結果だったのかと思うと複雑な気持ちだ。
葵がこの世を去ってから私の心には穴が空いてしまって、彼は未来を捨てる決断をすることとなってしまった。
噛み合わなくても、共通することは何処かに必ずある。何気ない日常に加わったぶつかり合いは、私を狂わせたのだろう。しかし、それが私の心の穴を埋めて、彼の未来が救われたとするならば、葵が私達を繋いでくれたのかもしれない。
亡き彼女の思いを胸に、
「私も好きだよ。智輝君」
進んで行かなければならない――。
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