23 OL、無愛想なエリート先輩との思い違いにようやく気付く。

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「奈紡が、好きだ。どうしようもなく、好きなんだ」  その言葉が紡がれた瞬間に、涙が溢れた。  幸せで、満たされて。 「……私も、好きです」  照れくさくなって、先輩に向けていた視線を前にした。  そよそよと、優しい風が吹いている。 「好きだから、助けたいんです。好きだから、支えたいんです」 「だが、麻凪のこともある。俺と付き合っても、普通の恋人みたいなことは――」 「いいんですよ、そんなこと。好きだからそばにいたい。それだけじゃ、ダメなんですか? それに、恋人みたいなことは――麻凪くんが大きくなって、巣立っていってからでもできるじゃないですか。そうしたら、たくさんデートしましょう?」 「奈紡……」  小さく私の名前を呼んだ鬼藤先輩は、フフッと笑う。 「お前は、本当に優しいな」 「鬼藤先輩だって優しいじゃないですか。私は、鬼藤先輩に何度も助けられま――」  言いかけて、また唇がふさがれた。  ややあって、唇が離れて。 「ちょ、ちょっと、ここ外です!」 「……じゃあ、帰ったらまたする」 「あの、そういう問題じゃ――」 「ああ、それから――」  鬼藤先輩は、とびきり優しい顔で言った。 「名前で呼んで欲しい。あの時、みたいに」 「……悠宇、さん」  言えば、また彼の口が近づいてきて。  だからそれを、今度はかわして。 「だから! 外ではだめです!」 「分かった。じゃあ、家までとっておく」 「そういう問題じゃ――」  言いあっているうちに、麻凪くんが起きてしまった。  はっとして、二人で麻凪くんの顔を覗く。  彼の寝起きの顔は、ふにゃんと笑っている。 「なつむとゆう、仲良し。ぼくも、いれて」  その言葉に、笑顔に、胸が掴まれたようにきゅうっとなって、じんわりと温かくなった。
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