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リビングでいつもの晩酌の準備をしていると、悠宇さんが寝室から出てきた。
「お疲れ様です」
「ああ」
悠宇さんが微笑してワインを選び、手に取る。
私はワインには無知だから、こればっかりはいつも悠宇さんに任せている。
「あ、その前に!」
私が言うと、悠宇さんは「そうだったな」と部屋の奥の収納棚を開ける。
取り出したのは、ラッピングされた箱。
麻凪くんへのプレゼントだ。
悠宇サンタは優しい顔をして、眠りについた麻凪くんの元に向かう。
私もトナカイになったつもりで、ついてゆく。
彼の枕元にそっとプレゼントを置けば、サンタクロースは任務を完了する。
グーサインをトナカイに向け、そのままそうっと寝室を出て。
リビングに来れば、私たちは私たちに戻る。
そっと互いに手を取り合って、ソファに腰かけた。
「プレゼントの中身、結局何にしたんですか?」
ワインを注ぐ悠宇さんに尋ねた。
麻凪くんを私が迎えに行っている間、ケーキだけでなくプレゼントもお願いしていたのだ。
「色鉛筆とクレヨンと、ペンが一緒になったお絵描きセットにした。ぬいぐるみは、また出かけた時に買ってやればいい」
なるほど、と思うと同時に、売り場で真剣にプレゼントを選ぶ悠宇さんが脳裏に浮かぶ。
似合わないなあとクスリと笑い、それを見た悠宇さんが「ん?」と怪訝な視線を向けてきた。
「麻凪くん、よろこびそうですね」
言えば、悠宇さんは嬉しそうに頬をほころばせる。
「ああ」
それでなんだか嬉しくなって、私はワインを頂きながら、隣に座る悠宇さんの肩にコテンと頭を預けた。
すると、悠宇さんの腕が私を抱き寄せる。
(甘いな……)
会社では絶対に見せない、私しか知らない恋人の顔。
悠宇さんは二人きりになると、途端に甘くなる。
幸せで満たされて、頬がにやけてしまう。
(こうなったのも、あの日からだよなぁ……)
私は悠宇さんと思いを伝えあった日の夜のことを思い出していた。
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