24 OL、無愛想なエリート先輩と未来を誓い合う。

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 差し出された箱の中に輝くのは、シンプルなデザインの指輪。 「家族……」  それは、彼にとって特別な言葉なはずで。  ためらいもなく紡がれた言葉に、胸がじわんと熱くなり。  そこからこみ上げた熱いものが喉をじわんと焼き、目頭まで伝わって。  涙が零れ落ちるまで、時間はかからなかった。 「悠宇さん……」  涙が止まらなくなり、嬉しさのあまり口元を抑え。  霞んだ視界の先では、まだひざまずいたまま、指輪を差し出す悠宇さんがいる。 「……」  そのまま固まっている悠宇さんを見ていると、なぜだか急に冷静になり。  気づけば、クスクスと笑いがこみ上げていた。 「……なぜ笑う?」 「だって、……パジャマなんですもん」  ストライプ柄のパジャマ姿の、王子様。  そんなワードが脳内に浮かび、幸せで泣けてくるのに、おかしくて笑いがとまらなくて。  そういえば、「恋人にならないか」と言われたあの時も、パジャマ姿だったなと思い出す。 「それは関係ないだろう」  少し頬を赤らめた悠宇さんに、愛しさが募る。 「……まあ、そうですね」  笑いながら答えれば、悠宇さんはふいっと顔を反らせてしまう。  ストライプ柄のパジャマ姿の王子様に、『照れ屋の』という接頭語がつく。  けれど、そんな悠宇さんもとても愛しくて。 「悠宇さん、あの……」  私は差し出された手を超えて、悠宇さんの首元にぎゅっと抱きついた。 「私も、悠宇さんと家族になりたいです」  言いながら、おでこ同士をくっつけて。  面食らったような顔をしている悠宇さんの唇に、そっと自分のそれを押し付けた。  離せば、また至近距離で目があって。 (……ヤバ、めちゃくちゃ恥ずっ!)  火照った頬を隠すように、慌ててソファに座り直した。 「奈紡……平気なのか?」  キョトンとしたまま、悠宇さんがこちらを見ている。 「……はい。私からの、クリスマスプレゼントです」  照れながら言えば、悠宇さんは徐ろに立ち上がり、私の隣に腰掛けて。 「……俺は本当に、奈紡にもらってばかりだ」  微笑んだ悠宇さんの顔が近づいて、反動で身体が強張ってしまう。  チュッと優しく唇を塞がれて、一瞬で離れていく。 「安心しろ。今はこれ以上は、何もするつもりはない。だが……、奈紡が愛しくて、抱きしめたい。それくらい、いいか?」 「……もちろんです」  言いながら、ぎゅっと私から抱きつく。  聖なる夜に、私たちはたくさんキスを交わし合った。
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