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――今のは姉の記憶なのだろうか。
気が付くと、私は病院のベッドの上に居た。
まともに寝れていないのだろう疲れ切った母と、行方不明になった姉を捜索しているという警察、それから病院の先生が居たのをおぼろげに覚えている。
私は重度の栄養失調と貧血によって数日寝込んでいたらしい。
何があったのかを両親と警察にありのまま説明すると、困惑する両親とは裏腹に、警察は苦い顔をしながらも、どこか納得した様子だった。
数日後、姉は遺体となって発見された。
特に目立った外傷も無かった為、姉は錯乱して一人で外出後、隣町の廃屋の中で自殺したのだと警察から説明された。
当然、そんな説明では納得しない両親を見ながら、私は静かに理解した。
きっと姉だけではなく、これまで多くの人間が同じような結末を迎えているのではないだろうか。
そう考えた途端、背筋に氷柱を差し込まれたような嫌な寒気を感じた。
それ以来、私は姉やあの男女について何かを調べるような事はしなかった。
そんな事件から数年が経ち、私は大学を卒業して普通の社会人として生きているのだが、テレビや雑誌、SNS等で”運命”という言葉を見聞きする度、今もどこかであの女が私を見ているような不安に襲われてしまうのだった。
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