こっくりさん、こっくりさん

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 そう言われてみると、確かに少しだけ鉄錆のような臭いがする。  突然の異臭に少女たちが困惑していると、窓の外に”それ”は現れた。  逆さまの男性だったと言う。  窓の外に突如として現れた逆さまの男性は、ゆっくりと地面に向けて落ちて行った。  そして、重たい水風船が地面に落ちた様な音が聞こえて、先ほどよりも強い鉄錆の臭いが教室内に漂ってきた。  少女たちは半狂乱になり、教室から逃げ出した。  四人は我先にと廊下を、階段を走り抜け、そのまま会話も挨拶も無くそれぞれの家へと一直線に帰った。それから翌朝までの記憶は曖昧だが、四人ともに帰宅早々服も着替えず布団に潜り込み、朝まで眠っていたらしい。  恐る恐る学校に登校すると、女性が飛び降り自殺をした痕跡は欠片も無かった。  そして、四人はそれぞれ口裏を合わせた訳でもなく、誰も先日の出来事について話そうとはしなかった。 おしまい。  話は突然終わり、私は玄関で立ち尽くしたまま唖然としていた。 「だからね?こっくりさんに運命の人について聞いちゃダメだよ」  女は笑顔でそう言いながら、さっきからピクリとも動かない姉を引き摺り、震えて声も出せない私の横を通り玄関から出ていった。  玄関の扉が閉まる音を聞いた途端、まるでテレビの電源を落とすように私の意識は途絶えた。
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