魅惑のお薬 (2)

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 ビビ、ビビッ…  耳に挿してあった小型のワイヤレスイヤホンが小さく振動を繰り返す。  …四時間、たった。  あたしは休み時間の教室から抜け出すと、トイレの個室に入り、ポケットから薬の入った赤い小さな入れ物を開け、口に赤い液体を流し込んだ。  …よし。これで、退屈だと感じなくていい。  あたしはあたしの貯金の残金を全て薬に入れ込んでいた。  最近、それだけでは薬を買う金が足りなくなってきたから、あたしの持っていた本とかを売って金を作っている。  あたしが瑠輝乃に叶薬屋に始めて連れて行って貰った日から早四週間。  この薬を手に入れるまでは、ずっと月日が流れるのが長くて長くてしょうがなかったけど。  この薬を手に入れてからは、もう毎日が短くて短くて仕方なかった。  そんなことを思いながら、入れ物をポケットに仕舞い、トイレを後にした。
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