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魅惑のお薬
あたしたちはいいなぁという声を浴びつつ、昇降口を出て、ぽてぽてと歩いていた。
周りにあたしたち以外誰も居なくなったとき。
「ミズハさんって、生きてるのつまんなそうにしてるね」
突然、瑠輝乃が言ってきた。
「え、なんでそう思ったの?」
「何となく。僕も、この間までは生きてるのがつまんなかったから、何かわかるなぁって」
そう言って瑠輝乃は、小さな薄い赤色の入れ物をポケットから取り出して蓋を開け、綺麗な透き通った赤色の液体をこくんこくんと飲んだ。
その様が何ともかっこよくて、あたしはまたどくん、とした。
「高比良さん…何を、飲んだの?」
「これ?これは"人生が退屈じゃなくなる薬"」
「"人生が、退屈じゃなくなる薬"…⁉」
「そう。僕も、君みたいに人生が退屈で退屈で仕方なかったから。薬屋で、売ってもらったの。四時間に1回飲めば、薬が効いている間人生が退屈だと感じなくていい薬なの。あと、僕のことは瑠輝乃って呼んでよ」
「そ、そんな薬在るんだ…。…瑠輝乃さんも、あたしみたいな思いを抱えてたんだ」
「在るんだよ、それが。僕は、これから薬屋に買いに行こうと思うけど。ミズハさんも行く?」
「…行く」
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