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振り返った彼の表情を見て、悟った。
──余計なことを言ってしまった…っと。
「決めるのは俺。お前じゃない。」
ここまではっきり線引きされると、もうこれ以上先へ進もうとはとても思えなかった。
披露宴というビッグイベントを無事に終え、張り詰めていた気持ちが少し緩んだせいか…
ただ単純に冬弥さんに拒絶された事がショックだったのか、、
心当たりは数え切れないほどあるが、彼が私に向ける冷たい眼差しに耐えることが出来ず…遂に堪えていた涙が堰を切ったように流れ出す。
一度泣き出してしまうと、しばらく止めることが出来ない。この情けない泣き顔を彼に晒したくは無かったので…こちらから背を向けて彼の視線から逃れる道を選んだ。こうなるともう…
──早く、出ていって欲しい
という私の思いが彼に伝わることはなく。
「……君に求めるのは跡継ぎを産んでもらうことだけだと言ったのは、確かに俺だ。」
胸が締め付けられる言葉を蒸し返すように口にした彼の声を聞いて更に涙が溢れる。
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