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私の居酒屋のような返事に噴き出して笑うカエデ様。やった!また笑顔ゲット!そう思いながらも慣れた手つきで丁寧に写真をファイルにしまい込む。そして白手袋も外してしまい込む。
そして私の手を握ってくれたカエデ様に涙する。なにこれ今日はすごいね私明日死ぬのかな?
「ふふ。ナオちゃんといるといつも元気貰えるね。いつもありがとう」
「光栄です!わ、私の方こそ、カエデ様に出会ってから必死で勉強して近くに会社でOL遣れてます!多分普通の給料より3倍ぐらいもらってます!カエデ様に会いたい一心で何をやっても頑張れます!だから今の私があるのは……カエデさまのおがげなんでしゅーー」
最後までは耐えられなかった私は、カエデ様の吹き出し笑いと共に、スタッフに剥がされ、横の休憩スペースへと誘導された。
座り込みしばし泣きながらカエデ様を見つめる。
隣にはすでに終わっていた美穂がいて、ヨシヨシと私の頭を撫でてくれる。ありがたい。惚れてまう。
「今日はいつにも増して感極まっていたね。どしたの?」
「わかんだい……なんだが、ぐす……今日もまたざいごうびうるわしいがごおもっでぅぁーん」
なんだこれ。自分でも分からないぐらい感情があふれてきていた。美穂が「よく分からないけどそっかそっか」とさらに背中をポンポンとさすってくれた。おい!もっと泣いちゃうぞ、いいのか?
私がそんなことを思っているうちに、スタッフがやってきて「こちらへ」と二人まとめて別室まで連れてこられた。
「私、何かやっちゃった感じかな……」
「いやー正直今日は死ぬほどやばかったからねーどうだろう……」
私は目の前が真っ暗になりどうだった。スタッフに迷惑をかけてしまった……ファン失格だ……
そこへ、ガチャリとドアの開く音がして、顔を上げた私が見たのは……笑顔を携えたカエデ様と、『カラーズファイブ』の他のメンバーであった。
「えっ?なんで?どうして?私死ぬの?」
私の言葉にメンバーがどっと笑う、隣の美穂はそれどころではなく、放心しているようだった。
「ほんとやっぱり面白いねナオちゃん」
そんなことを言うのはワカバ様。セクシーダイナマイトなお胸をお持ちのグリーン担当である。緑のストレートロングが綺麗ですね。
「うん。おもしろかわいい」
ブルー担当の幼い体をお持ちのマリン様が意味不明なことを言う。おもしろかわいいとな?
「そうね!それに磨けば光りそう。あと美穂もさっきぶり。やっほ!」
「ひゃい!」
ブラック担当の美穂が推してるトバリ様の言葉に美穂も思わず上ずってしまう。珍しい光景だ。
「私もいいとおもうよー。多分磨けば光る!かもしれない?」
パープル担当のアヤメさんが、トレードマークの紫のツインテールをふりふりしながらこちらを見ていた。
「でっしょ!ナオは私の最推し!お気に入りなんだから!」
「はいはい!お気に入りなのはいいとして、そろそろ話してあげないとほんとやばい顔してるわよ?」
カエデ様の最推しという言葉に「ああ、やっぱりこれ夢か……」とつぶやきならが口元をだらしなく緩ませる。そしてそれを見たトバリ様が何やらカエデ様に話しかけていた。
「ナオちゃーん。戻ってきてー」
「は、はい!これは夢ですね。夢から覚めたら私は医務室かどっかなのですね!迷惑かけてごめんなさい!」
またみんなが笑ってくれた。いい笑顔だ。この笑顔だけで私は明日を生きていける。たとえ夢であったとしてもだ。
「なおちゃん。えいっ」
私はカエデ様に抱きしめられて「えっ」と声を漏らす。いくら夢でもこれはまずい!アイドルにスキャンダルは良くない!たとえ女同士であってもだ!
「い、いけません!たとえ夢でもスキャンダルはごはごはご法度で!」
「もう!これは夢じゃないってば!えいっ!」
今度は頬っぺたを引っ張られる。あー!嬉しい!カエデ様がー!ってか痛い!痛いから!えっ痛いの私、夢でも痛いとか不思議……まってこれだめなやつ……
「えおおうはひ……」
「ナオちゃん、さすがにそれは解読不明すぎ」
笑いながら頭をポンポンするカエデ様を見ながらスーハーと息を整える。が、やはり甘い香りが漂ってきてちっとも落ち着かない。
「どう、どうしたらいいのでしょうか。息を整えようにもカエデ様の香りで興奮してしまいます」
また皆が笑う。このエンドレスの流れから脱出する方法を見失った私の目の前に、美穂が現れ私の両肩に手を置くと「まずは息をしっかりするのよ!」と声を掛けられた。その声につられて深呼吸を繰り返す。
「うん。ありがとう。嗅ぎ慣れた少し濃い目の香水の匂いでちょっと冷静になれそうだよ」
「あんたね。トバリ様の前じゃなきゃ殴ってたわ」
その言葉に私はフフと声が出る。それをみてため息をついた美穂は、私の肩に置いていた手を外すと、元の位置に戻っていった。でもその目線はやっぱりトバリ様を見ていたので、すでにその目が少しうつろになっていた。
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