猫の涙

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「夜遅くに呼び出して、すみませんでした」  振り返った望月さんは、昼間と違う私服だった。  高台の公園からは美しい夜景の上、煌々と輝く月が見える。 「どうしたんですか? 突然」 「さっき()が送った歌の意味、分かりましたか?」 「え?」  夏彦さんの短歌なのに、何で望月さんが送ったとか言ってるんだ?  混乱している僕の横で、望月さんは話し出した。 「5歳の時両親を事故で失くした。その後施設で育ち17で上京した。伯父が勤めていた出版社で雑用の仕事をしながら、時々短歌を詠んだ。  ある日一人の男の子からDMが来た。  彼の物語を読んだ時、何年かぶりに泣いたよ。  無感覚なふりを続けていると、心は知らないうちに乾いていく。  乾き切った地面を潤して豊かな土壌にするために必要なのが、芸術だよ。  ちょうど、君の書く物語のような」
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