猫の涙

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 それから夏彦さんとのやりとりが始まった。お互いに素性は明かさず、ただその日あったことやお互いの趣味のこと、短歌の話などをした。彼は僕にとって唯一の友人になった。  暫くすると、メールアドレスを交換してメールでやり取りをするようになった。  そのうち僕は夏彦さんの真似をしてTwitterで短歌を詠むようになった。 海の色が空の青を映しても僕の涙は無色のままで  素人丸出しの下手くそな歌なのに、夏彦さんはいいねを押してくれた。 『君はセンスがあるよ。何でもいいから、物を書くといい。誰にも言えないことでも文字に起こすと、気持ちが整理されて、すっとしたりするよ』  夏彦さんはある日のメッセージで言った。  僕はそれから、物語を綴るようになった。
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