プロローグ

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プロローグ

 俺は剣と魔法の異世界に転生した、30代無職男性だ。ただ、転生したと言っても、時々意識が覚醒するだけで、ほとんどは眠っている。  しかも、その起きる時というのが最悪なことに、必ず男とキスする寸前だった。俺は本能的に拒絶して、思わず相手を殴り飛ばした。そんな悪夢みたいなことが何度か。    何ともつまらなく、気持ち悪い異世界生活だった。    今日までは。 ――ん? これは……覚醒した?  時間は夜、部屋にはベッドがある。マズい。非常にマズい。今までの傾向から、BL展開になるのは間違いなかった。しかし、相手の男は一向に現れない。 ――何でだ? 早く来いよ。……いやいや、来なくて良いんだよ別に、うん。  警戒してキョロキョロと部屋を見渡す。そこはログハウスのような家屋の一部屋で、薄いピンク色のベッド、化粧台に口紅や化粧水などの道具、木枠の窓から外を見ると、村であることがわかる。それから大きな鏡……そうだ、俺はどんな姿なんだ? 「か、か、か…… 可愛い!!」  俺はめちゃくちゃ可愛い女の子に転生していた。歳は16か17くらい、銀色の美しく長い髪に、青空のような瞳、黒い魔法使いのローブのような服を着ている。マジか!美少女魔法使いに転生か!    俺はすぐさま重要事項を確認する事にした。この異世界では、どんな危険が存在するかわからない。ゆえに、きちんとこの身体を隅々までチェックしておく必要があるのだ。  まず、装備の確認だ。異世界において装備の優劣は生死に直結する。 ――ということで、失礼して……  俺はローブの裾に手をかけ、少しずつめくり上げていく。足首から上に脛、膝、太もも……そしておパンツを見…… 「見っっっなぁぁぁぁいいいい!!」  この身体の女の子は突如叫び、俺はローブの裾を手放し、万歳のような格好になった。なぜだ? いや、そんな事はどうでもいい。 「パンツ見れなかったああああ!!」
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