捜査

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 大きなカバンを担いだ鑑識班が裏口から3人入ってくる。「念のため」と言われてやちよも指紋と掌紋を取られた。黒い墨のような塗料を両手に塗られ、力士の手形のように専用の紙に転写される。  好奇心のせいで容疑者扱いになった。こうなったら自力で犯人を特定してやる、と闘志も湧いてくる。  薬局スタッフは一人ずつ、鶴原刑事により2階の休憩室で聴取を受けている。  一番初めの、月影先生の聴取が終わったようだ。疲れた顔をして待合室に戻ってくる。扉には『本日臨時休業』の張り紙が張ってあるため、待機している人間はやちよしかいない。 「聞いてよ、やちよさん。私、犯人扱いされたんだから」  月影先生は憤懣しながら刑事とのやりとりを話した。  昨日の行動はこうであった。  8時半出勤。海野管理薬剤師と大阪社長は先に出勤していた。裏口のマスターキーを持っているのはこの二人だけだ。  みどり薬局は民間のセキュリティ会社と契約しており、裏口のマスターキーを施錠することでセキュリティが働く。不正に正面、裏口の扉を開ける、ないしは窓を割ればサイレンが鳴り、15分以内にはセキュリティスタッフが急行する。  監視カメラは玄関と裏口に二つ。マスターキーで施錠された時から夜間だけ録画が行われ、開錠されれば録画は停止する。  9時から勤務。9時半まで薬局清掃。薬剤師はその間に調剤器具もチェックする。9時半開局。10時に大阪社長が発注した医薬品の受け取り。リンヴォックが多いなとは思ったが、リウマチ、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎の薬だから仕方ないと思った。誤って発注したなら使用期限内に返却すればいいだけだ。  13時に休憩で、2階の休憩室で15時まで食事等。  15時から仕事再開。午後の医薬品発注は無し。  みどり薬局独自の調剤ミス防止策で、17時過ぎに一人一人、15分の小休止が与えられる。  順番は海野先生、山口さん、月影先生、大阪社長。休憩の順番は海野先生の指示だ。  19時終業。調剤器具洗浄の後勤務終了。月影先生は一番に帰宅した。 「裏口って、そんなに堅固な鍵だったの? 私営業に来たけど普通の扉にしか見えなかった」  やちよが疑問を口にすると、 「セキュリティが起動するのはマスターキーを差した後。普段は薬品の卸も来るし、ただのオートロックがかかるだけ」  
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