11.婚約者に嘘がバレる

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11.婚約者に嘘がバレる

一晩寝て目が覚めたらイジュンの報道やミンジェのことが全部夢だったらいいのに――そう思いながら眠りについた。 だけど朝起きてもこれらは全て現実で、依然としてペンカフェや各種SNSはイジュンとミンジェを巡る憶測や批判で溢れていた。 韓国ではSNSやウェブメディアに対する悪質なリプライのことを『悪プル』と呼ぶ。 元々イジュンがZ-Touchメンバーの中でもドライな性格で、ファンへの対応がときに冷たかったり過密スケジュールのせいで不機嫌なことが度々あった。そのせいで元々人気の高さに比例するようにアンチの存在も目立っていた。 そこへ今回のスキャンダル発覚となれば悪プルも過熱し、事務所がいくら対応しても炎上の火の手は収まることがなかった。 『恋人をつくらないって約束したのに嘘つき』 『裏切り者。他のメンバーに謝れ』 『ファンを舐めてる』 『レンタル彼氏と付き合ってるなんて』 といった怒りのコメントはまだしも、『ミンジェという奴は体を売ってる』『イジュンも枕営業で人気になっただけ』など全く根拠のない罵詈雑言までネット上には溢れている。こういった悪プルを苦にして精神的に追い込まれ、自ら命を絶つ芸能人がいるのにそれでも悪プルは無くならない。 ――僕だってつらい。だけどこんな悪口書いても仕方がないのに……。 今イジュンはイベントなどファンと直接触れ合うタイプの活動を自粛していた。法に触れることをしたわけじゃないから、CMやレギュラー番組にはそのまま出演している。 だけどどの番組で見ても顔色はあまり良くなかった。 「倒れたりしないといいんだけど……」 ミンジェはどうしているのだろう。彼はレンタル彼氏であって、芸能人ではない。だけど半ば個人を特定されたようなものだから顔を出して外を歩けなくなっているかもしれない。 「でも、結局どっちも僕の友達なわけでもなんでもないんだよな」 僕が傷つこうが心配しようが何も変わらない。 僕に出来ることがあるわけじゃないし、逆に向こうに騙されたから謝罪をしてもらいたくても、連絡する術もないのだ。 「あーあ。もう足を洗うしかないか」 もしかして、数年後にはほとぼりが冷めているかもしれない。 僕は自分の気持ちに整理がつく日まで、推し活を休止にすることにした。 コンサートやイベントなどの参加をやめ、しばらくは情報を追うこともやめよう――。 ◇ その翌週、僕は夏休み中で推し活も休止してしまったので特に何をすることもなく部屋でダラダラ過ごしていた。 そろそろ食品の買い物にでも行かなければ――と思っていたら着信があった。 ――滉一さんだ! あの日彼が家に着いたという連絡があってから、しばらくなんの音沙汰もなかった。おそらく仕事が忙しいのだろうと思ってこちらからの連絡は控えていたのだが、ようやくこちらへ来る予定が立ったのかも。 僕は久々に明るい気持ちになって通話ボタンを押した。 「もしもし、滉一さん?」 『千景、連絡が遅くなってすまない』 「いいえ、全然。元気でしたか?」 『ああ。今少しだけ時間あるか?』 「はい。家にいるから大丈夫ですよ」 『それはよかった。ちょっと急なんだが今日これから君の家に行っていいかな。話があるんだ』 「え、今日うちに来るんですか!?」 『ああ。というか、もうマンションの前まで来ている』 ――は!? なんで?? 「あ、あの、部屋が散らかってるし、僕が今から急いで支度して出ますからどこかお店で――」 『いや、外じゃだめだ。君の部屋じゃないと』 「え? 一体どういうことですか……?」 どうしよう。滉一さんにはミンジェとルームシェアしてるなんて話をしてあるけど、この部屋はどう見ても一人用のスペースしかない。 「あの、本当にうち今汚くて……」 『構わない。今ミンジェくんと一緒なんだ。外でぐずぐずしていられないんだよ、言ってる意味はわかるよな?』 ――え、なんで滉一さんとミンジェが一緒にいるんだ……?
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