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15.担降り or ?
全てが解決し、ミンジェとイジュンの二人は明日もスケジュールがあると言って帰っていった。せっかくだから推しともう少しだけ同じ空気を吸っていたかった――なんて高望みしすぎだよね。
去り際にイジュンが「兄さん、千景をそのまま一人でホテルに泊まらせちゃだめだからな」と釘を刺していった。
「なんでホテルに泊まっちゃだめなんです? 僕、ちゃんと予約しましたけど」
「千景。君は今ミンジェのフェロモンのせいで発情しかけてるだろ? そんないかにも抱いてくださいって顔でどこに行くつもりなんだ」
まったく、とため息混じりにそう言われて頬を触ってみれば、ほんのり熱い。
「あ、やばい。そろそろヒートなの忘れてた……!」
それを聞いた滉一は歩けると言ったのに僕を抱えて車に押し込んだ。そして彼は僕のスマホで勝手にホテルをキャンセルし、彼のマンションへと僕を運んだ。
「そういえばイジュンが滉一さんは家に人を呼ばないって――。僕は特別ってことですか?」
「当たり前だ」
「そっか……よかったぁ」
先日まで皆に裏切られたと思って落ち込んでいた。それが急に全部解決してホッとしたと同時に涙が出てきた。
「お、おい。泣くなよ千景」
「だって嬉しくて……皆が僕の前からいなくなっちゃって、どうしようと思ってたから――」
マンションの部屋に入りドアを閉めるなり、滉一は抱えていた僕を下ろして口付けした。玄関ドアに背中を押し付けられるようにして彼の唇を受け入れる。
「すまなかった……千景、本当はものすごく会いたかった」
そう言って彼が再び唇を合わせた。
――僕だって会いたかった。婚約破棄されてどれだけ落ち込んだか……。
だけど彼の香りを胸いっぱいに吸い込むだけでそんなのはどうでもよくなった。正直もう発情しかけていて、体の節々がじわっとだるくなってきている。
「君が会社のエントランスにいるのを見たとき、幻覚かと思った。もう会えないと思ってたから」
「でも滉一さん冷たかったじゃないですか。イジュンが来なかったら僕と話もしてくれませんでしたよね?」
千景が睨みつけると滉一が申し訳なさそうに眉を下げる。
「すまない――実を言うとかなり動揺していたんだ。久々に君の香りを嗅いだから、決心が揺らぎそうで――」
「決心って?」
「君を拒まないといけないのに、君の匂いに惑わされてなんでもイエスと言ってしまいそうになるから」
滉一は甘く微笑んで僕のこめかみにキスをする。
「早とちりして君を傷つけてすまなかった」
「――わかってくれたならもういいです。おかげでイジュンとミンジェにキスしてもらっちゃったし」
僕がさっきのことを思い出して思わずにやけると滉一の目の色が変わった。
「……もしかして俺より潤二とのキスの方が嬉しいのか?」
「え、違うよ! そういうことじゃなくて、だからイジュンに対しては恋愛感情はなくて――」
滉一は無言で僕の腕を掴んでずんずん部屋の奥へ進んでいく。
「え、滉一さん?」
ちょっと乱暴に突き飛ばされ、ベッドに倒れ込んだ。
「わっ!」
「その匂い、気に入らない」
滉一が僕の体に覆いかぶさってきて、匂いを嗅がれる。
――あ、さっきミンジェのフェロモンがついちゃったから……。
「ミンジェくんも、俺をけしかけるためにわざわざ口にキスまですることないじゃないか。ほっぺだっていいはずだろ?」
「それは、そうだけど……」
滉一は文句を言いながらも僕の着ている服のボタンを器用に外していく。
――滉一さんて結構嫉妬深いし、僕のことかなり好き……だよね?
今まで付き合ってきた人にもそうだったのかな……。
「滉一さんって、執着強めなタイプですか?」
「いいや。今までは大体が一夜限りだったし、次にまた会いたいと思ったのは君だけだ」
そう言って彼はさっきよりも深く口付けてくる。しかし僕の体はもうキスだけでは我慢できそうになかった。
「滉一さん……体が熱い。もう、早くして」
「……君なぁ、俺がさっき言ったこと忘れたのか?」
「覚えてるよ。なんでも聞いてくれるんでしょ? お願い、今日は激しくして」
前回みたいな優しいエッチもいいけど、今日はヒートで熱くなっている。
僕が見上げると滉一は横を向いて深呼吸した。
「俺も我慢の限界だっていうのに。そんなねだり方誰に教わったんだ?」
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