執筆のオクスリ

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『違う薬をください』 私はネットで薬販売をする会社にメールを送った。返事はすぐに来た。 『どのような薬ですか?』 私は少し考えてから、メールの文章を打つ。 『小説が書けるようになる薬です』 しばらくして返ってきたメールに、私の指が止まる。 『小説を書けるようになる薬は前に販売しましたが、効果はありませんでしたか?』 私はじっとそのメールを見つめる。そう、確かに、効果はあった。しかし、私が求めていたのはそうではないのだ。 『効果はありました。しかし、勝手に文章が書ける薬でなくて、自分の頭で考えた物語を、自分の頭で考えて書けるようになりたいんです』 そうメールを送って、私は後悔する。いったい何を私は言っているのか。赤の他人の、ただの薬屋さんに、ここまでお願いするのは失礼ではないか。そう思ったが、返事は予想もしないものだった。 『この住所の場所に、お目当ての"おくすり"が置いてあります』
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