恋人はよく分かんねぇからもう作りませんッッ!!

2/7
前へ
/298ページ
次へ
. . . 逢坂巽(生徒会長親衛隊長)side 俺は病室の扉に背を預けて呆然と床を眺めていた。 翔也くんが倒れた。 朝倉くんが咄嗟に翔也くんを庇ってくれたお陰で怪我は最小限に抑えることが出来た。 本来ならば俺がその役目を担うはずなのに、顔色悪く目を伏せた翔也くんに俺は立ち尽くすだけだった。 前々から翔也くんの体調が悪いことは分かっていた。それでも、「大丈夫」と辛そうに微笑む翔也くんに俺は何も出来ずに「.....そっか」と微笑み返すしかしなかった。 翔也くんが俺の事を全く意識していないことは分かっていた。初めて想いを伝えた日も、体育祭の時も、文化祭の時も、俺がどれだけ気持ちを伝えても俺だけを見てはくれなかった。 知ってるのに。翔也くんが無意識に人を好きにさせる事くらい。 今までたくさん見てきた。翔也くんが好きで親衛隊に入る生徒だけでない。幼馴染以上の気持ちを募らせる朝倉くん、誰よりも、自分自身よりも翔也くんを大切に思う藤原くん、密かに想いを募らせている川上くん。 こんなにもライバルが多い。 俺を選んで欲しい。俺だけを見て欲しい。 嫉妬心は膨れ上がり、抑えてきた黒い気持ちが溢れ出しそうになる。 翔也くんが他の誰かと話すだけで心臓がギュッと締め付けられるように痛む。 体育祭の借り物競争の時も朝倉くんと藤原くんの方に意識を向けて欲しくなかった、文化祭だって大勢の人間がいる中でメイド服なんて着て欲しくなかった。 可愛い翔也くんは俺だけが知っていればいいのに 翔也くんを知らない頭の悪い人間は、翔也くんのクールな表面部分だけを見て騒いでいればいい。 こんな黒くドロドロした嫉妬心は日に日に大きくなっていく。 文化祭が終わって少しした頃、たまたま廊下を歩く翔也くんを見つけた。 その隣には俺の知らない男。 俺は足を進めて翔也くんとその男に声をかけた。 その行動は誰がどう見ても妨害行為。俺は嫉妬心を隠そうとせず、これから出かけると言った2人の邪魔をした。 正直気分が良かった。あんな男と2人きりになんかさせない。男には声をかけずに目で牽制をする。 バタバタとその場を離れた男。翔也くんと2人きり。 部屋に行きたいと言ったのは、ほぼ下心だったように思う。 翔也くんに気持ちを伝えるだけじゃ足りない。俺という存在をもっと見て、もっと感じて欲しい。 翔也くんは俺に気がない。自分に好意を寄せる男だと分かっているだろうに、軽率に部屋に上げてくれたのだから嫌でも実感する。 黒い気持ちは募るばかりだ。大きく膨れ上がったそれは、俺に気がないと実感したその時、風船の様に破裂した。 翔也くんの入れたココア。手元にある俺の分と机に置かれた翔也くんの分。水面からはもくもくと湯気が立っていた。 翔也くんがマドラーを探しに席を外した時、マシュマロが浮かんでいる翔也くんのココアに粉末状に砕いた薬を入れた。 魔が差した。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1390人が本棚に入れています
本棚に追加