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皇翔斗(風紀委員長)side
オーバードーズ
深刻そうに告げた医師、兄貴に至ってそんなことありえない。だから「変わった様子は?」と聞かれても「いつも通りでした」としか言えなかった。
一連の話を聞いて一目散に駆けて行った太陽は兄貴に詰め寄ったが、当の本人はケロッとしていた。だから、医師の話は大袈裟なんじゃねぇかって深くは考えなかった。
「......こ、れは.....なんだ......?」
「マンチカン」
「このゴミはなんだよ」
「メインクーン」
くしゃくしゃになった薄茶色と焦げ茶色の折り紙。兄貴にとっては猫らしいが、太陽が言った通りただ折り紙を丸めたゴミにも見えなくない。
二学期も終わり、冬季休暇に突入した俺たちは今日も兄貴の様子を見に来ていた。
俺と太陽は兄貴の傍を陣取って、折り紙で色んな種類の猫を作る兄貴を見守っていた。
父さんが折り紙で作った、名前は忘れたがなんかすごい立体的な猫を机の端に大事そうに置いて次々と新しい猫を作っていく兄貴。思わず、「ここは幼稚園か....?」と突っ込んでしまいそうだった。
「できた」
「......これは......猫なのか......?」
「ロシアンブルー」
「毛色がグレーってとこしかわかんねぇよ」
ずっとこんな調子で7匹目が誕生
父さんの力作の横にズラっと並んだ猫は正直、美味しそうな唐揚げに見えなくもない。今1番左端に追加されたロシアンブルーだけが灰色で他はほぼ茶色。
次に取り出した折り紙の色も茶色。ダメだ、また唐揚げができてしまう。
「翔也、俺飽きた」
「俺はまだ大丈夫」
「次、紫の猫作れよ」
「そんな毒々しい色の猫はいません」
いつものツンツンした生意気な態度はどこへ行ったのか、太陽は兄貴にベッタリくっ付いて離れようとしない。しかもベッドの上に乗り上げているときた。
ムカつくので引き剥がしたら喧嘩になった。兄貴を挟んで。
「ここは病院だから静かにしなさいッ」と近くを通った看護師に注意されたが、いつまで経っても兄貴から離れようとしないこいつに対抗するように俺もベッドに乗り上げた。
「おい、お前はベッドに上がってくんな。ベッドが壊れたらどうすんだよ」
「じゃあ、お前が降りれば?」
「降りるわけねーだろ、ばーか」
「........紫の猫、できた。名前、ムラサキジャン・キャットにする。新種の猫だよ」
「お前は相変わらずマイペースだな」
「名前、そのまんまだし」
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