父さんは日本人であってイギリス人ではない

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. . . 藤原 結衣(生徒会副会長)side 聞いてください。俺はもう無理かもしれない。 生きていけない。 推しに嫌われたらもう生きていけない。 新入生歓迎会が終わって1週間、6月が始まろうとしていた。 そうだと言うのに、俺は1週間推しにレスを貰えていない。 授業の座席は前後、放課後は生徒会で一緒に仕事、なのに一言も言葉を交わすどころか目も合わせてくれない。 むり むり まじでむり 俺が声をかけようとしても、どうしても避けられてしまう。 一方で、俺と一緒に新入生歓迎会の後、翔也と会っていた朝倉 祐介(あの害悪)は普通に翔也と話している。 ほんと、死んでくれないかな 今日も今日とて避けられてる。 そろそろ病む、てかもう病んでる、リスカする。 この一週間、授業もろくに頭に入らず、やることやること失敗ばかりだった。 あー、また間違えて必要な書類を捨ててしまった... それを見かねた会計の川上が、俺の机に紅茶の入ったカップを置いた。 入れたての紅茶は、モクモクと湯気を上げている。 「ふくかいちょ、クマすごいよぉ?どうしたの?」 今、この生徒会室には俺と川上の2人だけ、翔也と書記の熊谷は仕事を先に終わらせて帰っている。 「川上には関係ありません...」 「関係無いとしても、こんな状態のふくかいちょーをほっとく訳にはいかないっしょ?」 川上は俺の席の横に椅子を移動させて俺の返答を待っていた。 こいつは俺が話すまで待つつもりだ。 それでも俺は頑なに口を開かなかった。 カチカチと俺がホッチキスで書類をまとめる音だけが生徒会室に響く。 「....」 「....」 「....本当にそこで待つつもりですか?」 「うん」 どうやら退くつもりはないらしい。 「はぁ」とため息をついた俺は、前を見据えたまま川上に言った。 「貴方には本当に関係ないので、終わったのならとっとと帰ればいいじゃないですか」 「もーふくかいちょの辛辣〜! じゃあ単刀直入に聞くね、かいちょーと何かあった?」 「...っ」 なんだこいつ、チャラ男のくせに.... 「え、えぇえ!?ふ、ふくかいちょ!?」 書類をまとめる手は止まって、代わりに出したくもない涙が頬を伝って書類にシミを作った。 ギョッとしている川上の顔は見なくても分かる。 止めたくても止められない涙はバカみたいにこぼれて、もうすぐで始まる体育祭の書類の文字が滲んでいた。 「ぅ"う〜〜っ、うぇ"、しょう"やが....なんで、クソ風紀、なんかにぃ"ッ」 「え、え!?、え、ちょ、え??、ふくかいちょ!?な、泣き止んでえぇ!?」 戸惑う川上を無視して俺は、体の水分が無くなったんじゃないかってくらい泣いた。
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