父さんは日本人であってイギリス人ではない

3/5
1142人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
「...きいてますかぁ"!?かわかみッ」 「うん...もうかれこれ2時間は聞いてるよぉ...」 俺にとってはまだ序章じゃボケッ あれから2時間、俺はタガが外れたように川上に愚痴っていた。 「な"んで、クソ風紀はよぐでっ、俺は避けられてんだよぉッ」 「それ、この2時間で20回は聞いたよぅ...」 始めの方は、俺の一人称や口調がいつもと違うことに驚いていた川上だが、もう2時間も経てば慣れたのであろう、困りながらも俺の話に耳を傾けてくれる。 お前、そんなに優しかったのかよ、知らなかったよッまじでありがとうなッ 川上に対して申し訳ないという気持ちはもちろんある。現在進行形で俺の良心が傷んでいる。 俺はあの転校生とは違ってちゃんと人間だから、良心くらいある。あの害悪と一緒にすんな。 そうだ、元はと言えばあの転校生のせいじゃねぇか!! あいつのせいでしょうやの純潔が失われたのだ。 え?殺していいか? 「せいさいだッ制裁ッッ!!あの転校生は殺すべきだっ!!」 「あれぇ!?さっきまで風紀委員ちょーの話だったのに、突然だねぇ!?」 「落ち着いてぇッ!?」と俺を抑える川上だが、これが落ち着けるわけないだろ!? 推し(しょうや)の純潔が奪われた上に、俺は推し(しょうや)に嫌われたんだぞ!?は!?むりッ!!吐くっ!! 「ちょっと、ほんとに、ふくかいちょ落ち着いて! 俺もあれには本当に怒ってんだからっ!」 「はぁ!?」 「でもさ、ずっとこれでいいの?」 「...は?」 「だから、かいちょとケンカしたままでいいのって話! 制裁なんかよりそっち優先すべきなんじゃないの?」 「ウッ...」 川上の言葉は最もで、転校生なんかよりも俺が優先すべきはしょうやだ。 でも、しょうやは目も合わせてくれないんだぞ... 俺が、会いに行ったところで避けられる未来は見えている.... あぁ...考えたら、枯れたはずの涙がまた溢れ出てきた。 「はぁ...」とため息をついた川上、俺だって自分がどれだけめんどくさいやつか分かってるよッ、そんなあからさまにめんどくさい顔する必要ないだろッ 「ほら、行くよぉ」 「はぁッ!?行くってどこに!?」 俺の腕を掴んだ川上は強引に席から立ち上がらせ、生徒会室を出ようとする。 おいおいおいおい、この流れはもしかして 「どこって決まってんでしょ〜?かいちょの部屋」 「無理無理無理無理ッ!今は無理ッ!ほんとっ!川上このやろッ!力強ぇなおいッッ」 廊下を引きずられるように、連れていかれる。 向かう先はしょうやの部屋だという 予想してたよッッバカヤロォッッ まだ、しょうやに会う覚悟は決まっていないというのに強引に連れていかれる俺は必死に抗ったが、なんだこいつ、死ぬほど力強いんだが!? もはや、ゴリラだ。っていうか、多分ゴリラだ。 振りほどくことも出来ずにしょうやの部屋についてしまった。 なんも躊躇もなくインターホンを鳴らす川上は本当に悪魔だと思う。 さっきまで良い後輩だと見直してたのに、訂正する、お前はチャラ男悪魔だッ 「...ん?川上?」 扉の先にいた推しはいつも通り輝いていて、いつもならその神聖な空気を肺いっぱいに吸い込むのだが今日は息がしにくい。 誰かと電話をしていたのであろうしょうやは「後でかけ直す」と言ってスマートフォンをポケットに入れた。 「かいちょーとふくかいちょーが喧嘩してるせいで生徒会の空気が悪くなっちゃうんだよねぇ〜...ってな訳で仲直りしてね♡」 「仲直り出来るまで生徒会室出入り禁止だから」とウインク付きの笑顔に殺意が湧く。 後輩のくせに先輩である俺をしょうやの部屋に押し込んだあと、あの悪魔はいい笑顔で帰って行きやがった。 「...俺もがんばんなきゃいけないのに、何してんだろ...」 扉がしまった後に放たれた言葉は、俺の耳に届くはずがなかった。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!