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最低だ。
分かっている。
じわじわと溶けいくマシュマロ。それと、マグカップの底に沈んでいった催淫薬。即効性、依存性の高い薬。
そんなものを使って翔也くんの罪悪感に漬け込んだ。
「2回目」なんて言葉にする必要はないのに、翔也くんを急かすように返事を待った。
正直、返事を貰えるとは思わなかった。良い返事が貰えなくても身体からじわじわと堕としていけばいいなんて最低なこと思っていたから。
媚薬による勘違いだけど、俺はそれでも良かった。
これで翔也くんは俺だけを見てくれる。熱く火照った頬に手を添えて唇を交わす。人生で1番幸せな瞬間だった。
それからは翔也くんの部屋に訪れる度に薬をマシュマロの入ったココアに入れた。
ダメだとは分かっているのに、それよりも翔也くんが俺を見てくれないのを恐れた。
依存性の高いそれは徐々に翔也くんを蝕んでいく。頭を撫でていた手を離すと、不安そうに眉を下げる。
翔也くんが俺を求めている。それが、可愛くて可愛くて仕方がなかった。
翔也くんの体調不良は俺が盛った薬のせいだというのは明らかだった。
憔悴した翔也くんは俺に「大丈夫だ」と言っては、頼ってくれなかった。
どうして頼ってくれないんだろう.....
俺のドス黒い気持ちがまた膨らみ始めた。
そして、翔也くんは倒れた。
真っ青に憔悴しきった顔で浅く息を吐く姿。目は閉じられ、額からは血が流れていた。
俺のせいだ
全部、俺のせい
俺の自分勝手な行為でこんな事態を招いてしまった
俺は翔也くんの隣になんて立っちゃいけない。相応しくない。
朝倉くんが俺を呼んだけど、俺は動けなかった。
最低だ。顔を合わせる筋合いも無い。
「なんでッ、隣にいてやらねぇんだよッッ」
涙で顔をぐちゃぐちゃにさせた藤原くんが俺に掴みかかった。
俺は何も言えなかった。
翔也くんが運ばれた病室に足を運んだ時も、扉を開けるのに躊躇した。
責められて当然のことをしたのに、俺は最低だ。
分かっていた。翔也くんが俺よりも朝倉くんを頼りにしてる事くらい。
目を覚ました翔也くんは朝倉くんのネクタイを引っ張って背中に腕を回した。
見ていられなかった。こんな最低な俺が思っていい事じゃないのに。
気がついた時には病室の外で扉に背を預けたまま地面をじっと見つめていた。
扉の向こうでは翔也くんが声をあげて泣く声が聞こえた。俺の前では見せてくれなかった翔也くんの弱いところ。
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