恋人はよく分かんねぇからもう作りませんッッ!!

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「......ここにいたのか」 「.......」 不意に病室の扉が開かれた。朝倉くんだ。朝倉くんは後ろ手に扉を閉め、俺をじっと見据えた。 俺を見定めるような目に視線を外してしまう。 「.....話がある」 「.....うん」 「着いてこい」と言う朝倉くんの後ろを着いて行った先は人気の少ない病院の屋外。 備え付けてあった自販機で水を2本買った朝倉くん。多分、翔也くんの分だろう。 俺は自販機の隣のベンチに腰掛けて、朝倉くんの方には目を向けず、視線はずっと地面のコンクリートに向いていた。 「.....翔也くんの様子はどうだった.....?」 「あ? 自分で見に行ってやればいいだろ」 「.....そ、うだね」 そりゃそうだ。人伝に聞くなんて恋人のすることでは無い。 朝倉くんの視線が痛い。俺は顔を上げれずにいた。 「......諦めねぇことにした」 「......え?」 「宣戦布告。お前から翔也を奪う。お前に言いたいのはそれだけだ」 「......っ」 思わず顔をあげた。交差する視線。まっすぐと俺に目を向けた朝倉くんに肌がビリビリと痺れるような感覚がする。 羨ましい そう朝倉くんを見て頭に浮かんだ言葉。 「.......はぁー.......ははっ」 「あ?」 「いや、俺が入れる隙なんかなかったんだなぁって思ってさ」 目頭が熱く、鼻が痛い。 眉間にグッと力を入れて空を見上げた。 「......俺は、何してんだろね」 謝らないといけない。翔也くんの体調なんかそっちのけで自分の事しか考えられていなかった。 許して貰えなくてもいい。それだけの過ちを犯してしまったのだから許して貰えなくて当然だ。 頭が冷えた。冷静になれた。 「俺、翔也くんに謝らないと.....」 「........10分だけあいつと話す時間やるよ。俺は病室の外で待ってる」 「ありがとう」 好意を抱く相手のところへ誰も近寄らせたくない筈なのに、「10分間」の気遣いに朝倉くんは甘いなぁなんて思う。 それは余裕か、それともただの優しさか、そんなことを考えてしまう俺は本当に嫌なやつ。 病院の真っ白な床を朝倉くんと歩くがそこにはもう会話は無い。 静かに開いたスライド式の扉。朝倉くんは言った通り中には入っては来なかった。 カゴに入ったりんごを精一杯手を伸ばして取ろうとしている姿。ベッドからでは十分に届かないのか、ベッドから身を乗り出し手を伸ばした体勢のままぷるぷると震えている。 「.....翔也くん、危ないよ」 翔也くんが取りたかったであろう真っ赤なりんごを伸ばしたままの手に渡した。
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