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はじまりは撲殺
古刹は人生イージーモードで暮らしてきたニートでチートな人間だった。
誰かれ構わずモテるし、失敗なんてしたことがない。失敗という言葉は古刹の辞書には載っていないだろう。
道を歩けば、老若男女、犬にまで懐かれる始末。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とは古刹のためにあるような言葉だった。
最難関小学校、最難関中学校、最難関館高校、最難関大学を卒業して、高級官僚か一流企業かと就職先が騒がれる中、古刹が選んだものはFXだった。
誰かの下で働くことを嫌い、FX取引で一生困らない程度の富を得、悠々自適な生活を送ることを良しとして贅沢三昧な日々を送っていたが、突如空虚な気持ちが舞い降りてきて、豪邸を売り払い、くだらない人間関係をリセットし、家賃3万円の安アパートでニートのように暮らすを良しとした。好きな時間に起きて好きな時間に寝る。怠惰の極みだった。
誰かに愛されたことは山の様にあれど、自分から愛したことはあるだろうかと考えたら三日三晩眠れなかった。愛した思い出がまるでなかった。無かった。亡かった。
誰も知り合いのいない、必要最低限のもので生きていく様子はニートを通り越して仙人のようでもあった。
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