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「コンビニの子だよね、昨日会ったじゃん。」初対面の相手にも臆することがないと言えばいい意味に聞こえるしフランクだと言われれば悪い気はしない。悪い意味で言えば、ズケズケと相手のプライベートゾーンに土足で踏み込んでくるデリカシーゼロ男ということだ。
「え、知りませんけど。」タメ口をきかれても丁寧語で返すしず香。おそらくこれ以上関わりたくないのだろう。手にかけたドアノブはもう回しきっていて後はドアに滑り込めば逃げられる。
「いやいや、会ったから。」と、古刹がドアの下に足を挟んで閉めるのを阻止する。ニートでチートだが育ちはそんなに良くはない。中流家庭の平平凡凡な元ヤンの両親に育てられたくらいだ。トンビが鷹を産むとはよく言われるが、カラスが孔雀を産んだくらいに似ても似つかない親子だった。親子仲は悪くはない。定期的に連絡は来るし、定期的に返す。ただ住所は教えていないので差し入れが届かないくらいだ。
「しず香さん、しず香ちゃん、しず香君、どれで呼んでも素敵だね。」
「あなたに名前を呼ばれてそれに返事をするような仲だとは思ってもいないのですが。」
「分かった、呼び捨て希望だね。」
「ビックリするほど会話ができない。」
「しず香、うん、いいね。」
「もういいですか、バイト明けで眠いんです。」
「次のバイトはいつ?」
「それをあなたに教えると思いますか?」
「教えなくても、出ていく時間で分かると思う。」
「人の生活音聞いて興奮するタイプですか、変態ですね。」
「しず香が教えてくれたら変態にならずに済むよ。」
「夜の7時からです。」
「分かった、夕飯を一緒に食べよう。5時に迎えに来るよ。」
「ビックリするほど会話ができないんだな、君は。」
「じゃあ、おやすみなさい。」
「・・・おやすみなさい。」
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