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プロローグ
その日、青年は毒を飲んだ──
自らの死で目の前に横たわって祈るように眠っている彼女の命を救えると信じたから。
それは「正しく」もあり、「間違い」でもあった。
「んぐっ!」
飲み干された小瓶が床に落ちて、大きな音を響かせて割れた。
地下室に反響した甲高い音を、彼以外に聞く者はいない。
青年の視界は段々揺らいでいき、自然と涙が溢れてきた。
「俺じゃダメなの……?」
青年は喉が焼けるような痛みに耐えながら、彼女の元へと這って進んでいく。
「ヴィオラ……」
消え入りそうな声で彼女の名を呼ぶも、その瞳を閉じられたまま微動だにしない。
青年は必死に彼女の冷たい手を取って、頬を摺り寄せた。
「これで十一回目……何度失敗すれば君と会えるのか……」
そう言って彼は少し微笑んで彼女の元で息を引き取った──
──彼女はゆっくりと目を開き、自分の手を握って眠る彼を見つめて呟いた。
「そう、またダメだったの……」
頬を伝う一筋の雫は、青年の手のひらにポタリと落ちる。
彼女は彼の身体をそっと抱き起してゆっくりと棺に眠らせると、そのまま傷だらけの足で歩みを進めて、そとの世界へと続く扉を開いた。
「もう最後の命、ここで決めるしか彼を救う方法はないわ」
そう呟いた彼女は、森の中を抜けて王宮へと向かった──
彼女──ヴィオラは、”命の繋がった”恋人を救うために最後の人生を歩んでいく──
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