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「美羽、丁度よかった。今の話聞いてただろ。承認薬についてどう思う? 一度使ってみたいと思わないか?」
「多田……!」
「口を挟むな、桐生。俺は美羽に訊いてるんだ」
多田コーチの期待を望む眼差しと、桐生コーチの険しい眼差しが一斉に降り注ぐ。
「承認薬というのは、もしかしてあの……」
二人の話の流れ、そして承認薬という言葉に思い当たることは一つしかない。
けれど、もし間違っていたら──確認を怠ったせいで間違ってしまったとしたら、取り返しのつかないことになる気がして、私は慎重に問いかけた。
すると、多田コーチは興味を示したことに手応えを感じたのか、目を輝かせて大きく頷いた。
「ああ。スポーツ界で初めて認められた、注射型の栄養薬だ。勿論、ドーピングじゃないから心配することは何もない。堂々と大会に出られるんだ。まあわかりやすく例えると、エナジードリンクのようなものだな」
「エナジードリンク……」
「そうだ。どうだ、美羽。少しは興味が出てきたか?」
多田コーチの期待に満ち溢れた視線を、真っ直ぐに受け止める。
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