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「妹さんが居るなんて知らなかったから……。勘違いをして恥ずかしいからあまり言わないで」
そう言いながら、沙羅は安堵の息をつく。
会えないと思っていた慶太の顔を見た瞬間、好きだという気持ちが溢れて、一緒に居たいとしか考えられなくなっていた。
加速した恋心は、周りを見えなくさせる。
もしも、慶太が誰かと婚約をしていたとしても、見て見ぬふりをして慶太と居る事を選んでしまったかも知れない。
不倫で嫌な思いをしたのに、間違いだとわかっているのに、慶太を好きな気持ちは止められずに、暴走してまっただろう。
沙羅は、自分の中からそんな感情が湧き出た事に複雑な気持ちさせられた。
遊びであろうが、本気であろうが、不倫や不貞は人を傷つける行為だ。
サレ側の痛みを知る以上、スル側にはなりたくない。
「沙羅、うつむいていないで俺のことを見て……。まだ、心配事があるの?」
「ううん、慶太に婚約者が居なくて良かったなぁって、安心していたの」
そう言って、微笑む沙羅の後頭部へ、慶太の大きな手がまわり、頭を固定される。
そして、綺麗な切れ長の瞳が真っすぐに見つめた。
「そう、こう見えても俺、一途だから沙羅は安心していていいよ」
「ふふっ、慶太みたいに素敵な人に想われて、私、幸せね」
ふたりの距離が近づき、チュッとキスを落とされる。
「だから、いまは余計な事は考えないで、俺のことだけ考えて」
「慶太……」
瞼を閉じると、再び唇が重なる。はむような短いキスを繰り返し、徐々に深いキスへと向かう。
怖いほど、幸せすぎてジンと心が痺れてるような感覚に囚われる。
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