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慶太が萌咲と一緒に近づいて来る。沙羅は慌てて立ち上がった。
すると、慶太はバツが悪そうに頬をポリポリと搔きながら、隣に居る萌咲をチラリと見る。
「いまそこで、偶然会ったんだ。紹介するよ、妹の萌咲だ」
「はじめまして、一ノ瀬萌咲です。慶ちゃんがお世話になっております」
そう言って、笑顔でぺこりと頭を下げた萌咲の服装は、ボリューム袖のニットにマキシ丈のスカート、肩からカーディガンを羽織っているラフな装い、なのに品がある。
20代の若々しさを沙羅は、眩しく思った。
「はじめまして、佐藤沙羅です。こちらこそ慶太さんには、お世話になってばかりです」
「慶ちゃんと同級生って聞きました。同郷だなんて嬉しいです。今度ゆっくりお茶でもしましょう」
「はい、ぜひ」
「じゃあ、連絡先交換してください」
と、萌咲はスマホを取りだした。
兄妹で押しの強さはそっくりだと、沙羅は笑いながら萌咲と連絡先を交換する。
それを困り顔で見ていた慶太は、わざとらしく左腕に巻かれたクロノグラフに視線を落とす。
「萌咲は、時間大丈夫なのか?」
「あっ、いけない。彼に車を出してもらっていたんだ。ごめんなさい、これからデートなんです。また、お会いしましょう」
「はい、今日はお会いできて楽しかったです」
「……何か困った事があったらいつでも連絡してくださいね」
沙羅は、萌咲の言葉を不思議に思いながら「はい」と返事をした。
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