1501人が本棚に入れています
本棚に追加
/322ページ
藤井の家の広い玄関には、三毛の「のりたま」が待ち構えていた。
「おはよう」と声を掛け抱き上げると「ひろし」と「ゆかり」も後を追いかけて来た。足元でスリスリと身を寄せられて、可愛い猫たちの甘える仕草に癒される。
「おはようございます。今日は良いお天気ですね」
「おはよう。秋晴れの気持ちいい日よね」
今日の藤井は、黒のスラックスにからし色のニットで、いつもよりラフな服装、見た目は40代半ば。でも、以前話した内容だと、アラフィフの人を年下だと言っていた。年齢不詳の美魔女だ。
「せっかく天気がいいので、良ければ書斎の本棚の掃除をしようかと思っていますが、触ってもいいですか?」
沙羅の提案に藤井はパァっと笑顔をみせる。
「沙羅さんってば、本当に働き者ね。そうね、埃が溜まるとカビの原因になるからお願い出来るかしら? でも、一日で終わらせる必要がない場所だから無理しないでね」
「はい、ありがとうございます。では、猫ちゃんのお部屋のお掃除を終えてから取り掛かりますね」
さっそく猫たちのおトイレ砂の入れ替えやキャットタワーの埃取りなどに取り掛かる。すると、猫たちが「遊んで遊んで」とハイテンションで周りを跳ねまわる。
「こら、邪魔しないの」
「ねえ、沙羅さん。ちょっと、こっちに来て~」
今度は、藤井からの呼び出しだ。
「はーい、いま行きます」
何かな?と思いつつ、声がした書斎へと足を進める。
「御用ですか?」
「ごめんね。たいした用じゃないんだけど、前にね、沙羅さんに似ている親戚の子のお話したじゃない。それで、本棚にアルバムがあるの思い出したから見せたくなって」
「私に似ているなんて、気になりますね」
「でしょう?」
と、藤井はアルバムをめくり始めた。
最初のコメントを投稿しよう!