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 古い写真の中で、セーラー服姿の藤井がニッコリ微笑んで居る。  年齢不詳の藤井、いったい何年前の写真なのか、沙羅はチョット疑問に思う。 「わー、可愛い」 「いまどきはブレザーの学校が多いんでしょう。セーラー服とか時代よね」 「セーラー服は、可愛いくて憧れました」  写真の中のセーラー服姿の藤井は、学校の文化祭なのか、友人とはしゃいでいた。 「この頃はまだ、携帯電話も大きくて、一部の大人しか持てなかったのよ。だから、学生は使い捨てカメラで撮って現像して、友人には焼き増して配ったの。今は、スマホで撮影して、色んなアプリで共有が出来て便利になったわよね。でも、不便でも写真として形に残るのは、こうして見返せるも良いものだわ」 「そうですね。私も引っ越しの荷物まとめて居た時に、アルバムが出て来て、つい見いっちゃいました」 「わかるわ、つい見てしまうのよね」  藤井は、楽しそうに目を細め、アルバムをめくった。  次のページには、親族の結婚式の写真なのか、ウエディングドレスの花嫁とタキシードを着た花婿の写真が仲良く金屛風の前に座っていた。  その他に、結婚式会場の様子やキャンドルサービスの写真、親族の集合写真が見開きいっぱいに貼られている。 「そうそう、この写真よ」  そう言って、藤井が指さした写真には、沙羅の母親の幼き日の姿が写っていた。
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