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こんな偶然があるなんて……と、沙羅は戸惑いながら顔を上げた。
「あの、母と藤井様の関係って……」
「ああ、そうよね。わたしとみっちゃんの父親が兄弟なの。つまり、従妹同士の関係ね」
「従妹……」
「つまり、わたしから見て沙羅さんは従姪で、沙羅さんからだと、従伯叔母にあたるわ」
「私、両親が亡くなった時に父方といろいろあって……金沢を出て以来、父方の親戚とは疎遠になっていたんです。母方の親戚にも連絡の取りようがなくて、天涯孤独なんだと思っていました」
「そうなのね。ずっと、ひとりで心細かったわね」
沙羅は、静かにうなずいた。
離婚する時も、ひとりで美幸を育てて行けるのか、自分の選択に間違いはないのか、できれば両親に聞いて欲しかった。でも、それは叶わない。
暗闇の中、一筋の光を求めるように、ひとりで悩み手探りで進んで来たのだ。
「藤井様が、母と従妹で親戚だったなんて、驚きすぎて……。でも、凄く嬉しいです」
「わたしも嬉しいわ」
そう言って、藤井はそっと手を伸ばし、沙羅を包み込む。親愛のハグだ。
沙羅も瞼を閉じて、藤井から伝わる温もりを感じた。
それは、亡き母を思い起こさせる温かさだ。
静かに離れて、向かい合う。すると、藤井は名案を思い付いたように顔をほころばせた。
「そうだわ。今度、沙羅さんのお嬢さんの美幸ちゃんにも会わせて欲しいわ」
「はい、ぜひ会ってください。美幸も喜ぶと思います」
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