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「みなさん、落ち着いてください。そんな公約をするわけがないじゃありませんか。公約じゃなくて楽屋話でもしませんよ。全部蓮田さんの出まかせです。
「そんなことはねえはずだ。それじゃどうしてお前さんに投票したんだ。俺達を巻き込んでよ」
「死んだ人の悪口は言いたくありませんが、あの人は大法螺吹きです。それに矢田部さんのおじいちゃんが孫のように可愛がっていた猫を轢き殺した。私はすぐに知らせた方がいいと勧めましたが、彼はあとで謝るからとそれ切りです」
「蓮田の車に乗っていたおめえさんを見ているぞ。何をしていたんだ?」
「私は迷惑が掛かるからと断ったんですが、蓮田さんがどうしても送らせてくれと頼みこまれて仕方なく乗ったんです。蓮田さんは私がウクライナの戦況を確認したいと言う公約に賛成してくれました。だからみなさんに嘘を吐いて私に投票するよう勧めたんだと思います」
「俺は蓮田と飲み仲間だが、あいつがそんな公約に賛成するわけねえ。あいつはもっと現実的だよ。矢田部さんの仕事が増えれば村民にも回って来ると言っていた」
「だから蓮田さんの法螺ですって、もういいですか。序だからここで発表します。私は公約通りウクライナに行きます。勿論ナトー各国も回ります。下園玲子議員も一緒です。実は私達結婚します」
会場がざわついた。
「私達夫婦でこの村をよくします。明日から3週間視察します。みんなでいい村にしましょう」
桜木が壇上から降りた。その時金原仙人に抱っこされていた玉が桜木に飛び付いた。ギャーギャーと叫びながら桜木の顔を引っ掻き、耳を食い千切った。集まった者達は複雑な気持ちでその光景を見ていた。
「誰か、この猫を」
桜木が倒れて叫ぶ。誰も手出しはしない。
「蓮田さん、死んでしまいますよ。死んだらあなたの天国行は帳消しにされますよ」
金原が玉に言った。玉が金原を見つめた。
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