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そんなある日のこと。
初めて彼女は僕を目にすると歩みを止めた。
「……?」
そして僕と目線を合わせながらズリズリと少し距離をとっていく。やがて一定の距離を保ったまま通りすぎようとしていた。
「………」
その姿を見て僕はかなりのショックを受けた。
まさかバレたのだろうか。
僕がすれ違い様に匂いを嗅いでいたというのが。
すれ違うたびに鼻で大きく息を吸っていたからバレてたとしてもおかしくはないけど……。
すると彼女は恥ずかしそうに言ってきた。
「あ、あの、ごめんなさい」
「え?」
「け、今朝は急いでて髪洗ってないの」
「……?」
「……いつも私の臭い嗅いでたでしょ?」
はい、きたー!
僕がすれ違う度に匂い嗅いでるの思いっきりバレてたー!
「今日の私、きっと汗臭いと思うから……」
「そ、そんなことありません!」
思わず僕は声をあげていた。
「あなたから発せられる匂いだったら、どんな匂いでも僕にとっては宝です!」
ってー!
何を言ってるんだ、僕は!
完全に変態発言じゃないか!
けれども彼女はドン引きするわけでもなく顔を赤らめながら言ってきた。
「……ほ、ほんとに?」
なぜか嬉しそうだった。
綺麗な笑顔だな、と思った。
その笑顔につられて僕の口からまたポロリと本音が出た。
「はい。大好きです、あなたの匂い」
すると、彼女は「私も」とつぶやいた。
「私も、好きです……」
「……へ?」
「あなたの体臭」
「………」
変態だった!
彼女も変態だった!
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