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愛する者と共にいることができぬならいっそ邪魔であると考えた公爵位が効いたようで、私は自邸での謹慎のみで一切の咎めも受けずにいた。
その代わりメオは独房に入れられ処刑は免れられないであろうと、私がどんな反応をするのか興味でもあるのか、わざわざ帝国軍大将が伝えに来た。
昇進したことを感謝されてもいいと思うのだが。
「氷のプリンスは涙ひとつも見せませんか。大事な魔術師は手足を縛られ、口もきけなくしてあるというのに」
「私の魔術師を見縊るな。手足も口も使えずとも、お前の四肢を捥ぎ取ることすら容易い」
メオが魔術を使う時、杖も呪文も必要としないことを知る者は皆無に等しい。今更ながらに愕然として確認した独房は蛻の殻であったらしい。
その後、華族を護衛する専属魔術師制度は廃止となり、魔術の使用そのものが禁じられ、使った者は罰せられることになった。
――わたくしが追い出すって決めてたのに勝手に出て行くなんて、どういうつもりなのかしら。
――芽央ちゃんのことだからヒョコッと帰って来るんじゃない? そんな寂しそうにしないでよー。
――いろはがお茶にお招きしたいと、楽しみにしているわと、お伝えくださる?
――また車に乗せてさしあげたいですね。あまりに大喜びされるものですから。
私が一度でも愛していると伝えていたのなら、結果は変わっていたのであろうか。
幼い頃から長年、魔力がないゆえに虐げられ、事情があったにせよ碌に感情を表さぬ私などとの遣り取りですら、師以外と真面な会話をするのは初めてであったと嬉しそうに言っていた。
そして今度は魔力があるゆえに怖れられ、私の弱さと甘え故に離れ離れになってしまった。
私のこの生涯で、最も大切にするべきものは何か。
すべて捨てても、メオの小さな手を取るべきであったと、遅すぎる後悔に毎夜襲われる。
だからまるで幻聴かと思ったのだ。
独特なリズムのノックを、夢見るまでに待ち侘びた。
「あなたの魔術師です。拐かされてくださいますか?」
プリンスの魔術師は出来損ない
了
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