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10.キャンドル
「多笑嬢!舞人!」
館の扉を開けると、そこには見たことのない存在がいた。
「志燃!ララ!助けて!」
俺は謎の存在と多笑嬢たちの隙間に割って入った。
「こやつ、館を次々と壊していくんだ!このままでは全壊してしまう!」
「お前、もうやめろ!ここは皆の大切な場所なんだ!」
「うぅ…だぁ…!」
やつは頭を抱えて暴れ出した。きっと言葉では通じない。仕方ない。
「多笑嬢、ちょっと我慢してね」
俺はライターに火を点けた。
「まさか!」
「帰れ!お前にここは壊させない!」
「うぅぅ…!」
やつは余計に暴れ出した。
「ララ!危ない!」
ララにやつの手が当たりそうになったとき、すんでのところで多笑嬢がララを抱えて躱した。
「皆はあの机の影に!」
俺はライターでやつを牽制した。
「志燃、これを使って」
「これは…!」
ララが持ってきたと言っていた蝋燭だ。この大きさならきっと。俺は蝋燭に火を灯した。蝋燭は橙と緑の色をして激しく燃えだした。しかし、やつが退く様子はない。
「はあぁ……!」
絶対に、皆とこの館を守ってやる!蝋燭はさらに激しく燃えだした。
「仕方ない、これでどうだ!」
俺はやつに炎を翳した。
「ぐわあぁ〜…!」
遂にやつは体をうずめて動きを止めた。
「やったか?」
「…………し、……ね…」
するとやつの体は灰のように崩れ始め、姿を消した。
「あぁ、終わったのね」
「らら〜〜〜」
「待って、やつはどうなったの?」
「あいつはきっとmeanedだ。unnamedに似たようなものだ。火に燃えてしまえばもうこの世にはいられないな」
「そっ…か、…」
なんだろうか、この違和感は。最後にやつが発した声は、俺を呼んでいたような…
「志燃、その火を消して…」
「え、あ、多笑嬢、ごめん!すぐ消す!」
俺は息を吹きかけたが、蝋燭の火が消えない。
「なんで、何で消えないんだ!」
「志燃、あなた、生きてる…」
「え…?」
「あなたは本当に強い意志で私達を守ろうとした。その蝋燭に火を着けたのはあなたの命の火、魂よ」
腑に落ちた。俺の生きる意味は、誰かを守ることだ。大切なものを守ることだ。
「あっ…」
火が消えた。蝋燭はもう半分も残っていない。だけどひもの先端には熱が残っていて、白く発光している。
「皆、俺、生きる意味を見つけたみたい」
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