オイデオイデ

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「今回のスポットは期待出来るぜ」  助手席で北田が言う。俺達は趣味で心霊スポット巡りをしている。今日の目標は一家惨殺された、林の中の屋敷だ。 「そう言えばさあ、その辺りの上空で飛行機が行方不明になったんだよな?」  運転役の南野が言う。真後ろの俺は思わず身を乗り出す。 「その事件、俺、けっこう調べたんだよ。語っていいか?」 「おい、深入りすると招かれんぞ?」  そんなやり取りで、車内は爆笑が弾けた。  途中でコンビニ休憩。最初に車に戻ったのは俺で、三人が一緒に戻ると、すぐに出発した。 走り始めてすぐ、俺は生血のような異臭を感じた。今までも、曰く付きの場所に近づくにつれ、こうした異変に襲われる。異変はそれだけではない。カーナビが地図を表示しなくなり、青い線だけが蛇のように動いている。今回はレベルが違うみたいだ。みんなも無言になる。  到着。後は徒歩で目の前の林を抜ければ、目的地だ。車を降りようとした時、俺のスマホが鳴った。三人を先に行かせ、スマホを見て、俺は息を飲み込んだ。画像が届いている。真っ赤な画面。揺れている。まるで、火事の画像だ。  俺は脂汗を感じながら、思わず電源を切り、三人の後を追って林に入った。  すぐに林を抜けた。けれどそこに屋敷はなく、霧に覆われた寂れた村がうずくまっていた。  村の中央に、巨大な墓標。旅客機の残骸だ。そこからぼとぼとと人が落ちて来る。焦げた男、首の折れた女、内臓を垂らした老人、上半身だけの少女。その死人達が、一様に、俺に手招きを始める。  俺は逃げ出そうとして、何かに躓いて転げた。流石に、俺は叫んだ。それは三人の生首だったからだ。  俺は、招かれたのだ。怨霊が三人をコンビニで殺し、首を使ってなりすまして、俺をここに連れて来たのだ。  俺は必死で立ち上がり、逃げようとした。しかしいくら走っても、周りの風景が変わらない。先に進めない。  三人の生首がげらげらと笑い出した。俺は絶叫した。
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