普通の幸せ

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頭が痛くなってきた。

いや、正確には頭が痛くなりそうな気がする。
きっともうすぐ雨が降る。

お守りのように持ち歩く錠剤をマグカップに残ったお茶で適当に飲み込む。
30歳になるあたりから、頭痛薬が手放せなくなった。
運動不足もあるだろうな。

せっかくの金曜なのに雨が降ったら嫌だなぁ。
…って特に予定も無いけどね。

軽く首を回していたら遠藤くんが呼びにきた。

『16時からの打ち合わせ、そろそろ行くか。』

『もう、そんな時間？！行く行く。』

会社のシステム入れ替えにあたり、意見や要望を聞くために各部から代表者が選ばれた。
営業からは同期の遠藤くんと事務担当の私。

立ち上がろうとしたら、錠剤のゴミをつまみ上げて『また飲んだのかよ。大丈夫か？』と言ってきた。

ん？またって言った？
遠藤くんの前で飲んだことあったっけ？

大丈夫か？なんてサラリと言えちゃうんだね。
男子力高いなぁ。
彼の前で飲んでも言われたこと無いよ。
そんなこと思いながら打ち合わせの資料を探す。

『ありがとう、大丈夫。
帰る頃には雨だよ、たぶんね。』

『なんだよ、それ。』

『賭けようか？
当たったらコーヒーご馳走してね。』

いいぜってニカッと笑いながら先に歩いて行き、会議室のドアを開けてくれた。