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食事中は他愛のない話しをした。 普通に繋がる会話が楽しい。 休みの日はカメラを持って山に登ったり、ドライブしてるらしい。 素敵な趣味だなぁ。 私が食べ終わる頃、遠藤くんがコーヒーを持ってきてくれた。 つくづく、凄い。 『藤田さ、仕事量多くないか? 残業続いてるよな。 駒崎に丸投げされてんだろ。 本人の担当分は本人に突き返せよ。』 ああ…先輩に仕事投げられてるの、気付いてくれてたんだ。 なんか嬉しいな…救われる。 そして先輩を呼び捨て。 笑ってしまう。 『まあ、そうなんだけどね…。 仕事好きだし、大丈夫。 丸投げされてムカつく時もあるけど、完璧に仕上げて突き返すのもスカッとするよ。』 『仕事好きなのは見ててわかるけど。』 『仕事頑張るとさ、自分の居場所ができるじゃん。 認められれば嬉しいし。 自分にも存在価値あるなーって思えるというか…。』 言ってしまってからハッとした。 やばい、気を許して弱音を吐いてしまった気がする。 そういうの好きじゃないのに。 『…居場所ね。 結婚しねぇの? 長く付き合った彼がいるだろ?』 『うわーさすが同期。 久しぶりにストレートに聞かれたわ。』 『普通聞くだろ。』 『普通は?』 『普通は。』 真っ直ぐな人の前では真っ直ぐに話さなければ。 『結婚はまだする気がないみたいで。』 『藤田もまだ結婚したくないの?』 『そりゃあ、したいよね。』 『柴山も心配してたぞ。 この前藤田が来なかった飲み会で《あの子はあのまま何の変化も起こさず化石になるつもりなのかもしれない》って言ってた。』 『そうなの?…』 柴ちゃんは4人残った同期の1人。 昨年結婚して、仕事も続けてる。 柴ちゃんの結婚前は会社帰りに2人でよくお茶をしながら色々話した。 最近はあまり2人で会えないので、ラインで近況報告していた。 代わり映えのない内容で。 そんなに心配してくれてるのか…。 『このまま化石にはなりたくないよ…。』 『藤田が結婚したいなら、そんな奴別れろよ。 12年も付き合って彼女が30歳過ぎたのに、それはないだろ。 普通はそんなことしないぞ。』 表情が変わらないからピンとこなかったけど、胸を射抜かれることを言われた気がする…。 心臓がドキドキしてきた。 『…普通は?』 『普通は。』 頭痛薬のことに続いて、止めた方がいいのに止められない情けない自分をまた遠藤くんに見られている。 真っ直ぐに向けられた視線に囚われて、もう話題を変えるどころではない。 『誰にもハッキリ言われないから決めかねてるんだろ? キッカケが無いから。 だったら俺が背中押してやるよ。 そいつはダメだ。』
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