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「参加者は総勢2000人あまり。世界中から王族や大貴族が集まっている。うちの国王陛下もね。当然警備は万全だ」
ズボンを履いて少年の姿に変装した先生がいった。
「もし、失敗したらどうなりますかね」
私は10歳ほど歳を取ったようなメイクをしている。
「死罪、というかその場で衛兵に殺されるだろうね」
私たちは変装して結婚式に潜入していた。
「どうする? やめとく?」
怖くないと言えば嘘になる。
だけど私はフローラに幸せになって欲しいから。
「いえ、やります」
先生は最初から私がそう言うとわかっていたように頷いた。
「先生は本当にいいんですか」
「無理やり結婚させられそうなお姫様なんてボクにとっては最も興味深い研究対象だよ」
先生はこれからいたずらを仕掛ける少年のように笑った。
「その結婚待ってください!」
王子とフローラの婚姻の儀。静まり返った教会で私は立ち上がった。
一斉に全員の視線が集まる。
ここにいるのは大貴族ばかり。
さすがに声が震えた。
「お騒がせしてしまい申し訳ございません。ですが、皆様にどうしてもお伝えしたいことがあるんです」
会場がどよめき出す。
ここまで来たらもう引き返せない。
「実は私は王子と契りを交わし、すでに息子がいるんです!」
「パパー!」
先生が飛び出して、とてとてと王子の方へと駆け出した。
「な、なんだ!?」
状況が飲み込めていない王子。とフローラ。と会場の皆様。
「パパー! パパー!」
先生は子犬のように王子にじゃれつく。いつものふんぞり返った先生からは想像もつかない姿。
「し、知らないぞ。俺は知らん! なにかの間違いだ!」
「お忘れですか? ミランの街で過ごしたあの夜のことを」
先生が舞踏会の時に王子のスパイを捕まえて集めた情報を元に、わたしはでまかせを言う。
「ミラン……だと? あの遠征のときか……? だがあれはもう10年も前の話だぞ!」
「あのときに授かったのがこの子です。ご覧ください。髪の色もあなたと同じ」
に染めてある。
「パパー!」
がんばる先生。
「何が目的だ。金か? それとも地位か? なぜ今更なのだ!?」
「あなたがこれまで誰とも結婚しなかったからです。ですが、結婚されるというのであればその前にこの子を認知していただきたいのです」
会場はすでにかなりの騒ぎになっていた。
そんな中、フローラが私の目を見た。
「あなた、まさか……リコ?」
私は、今は気づかないふりをしてと視線を送る。
「私の子であるという証拠でもあるのか?」
王子が最低な逃げゼリフを言ったところで――
「それは心配いらない!」
先生がいつもの声で言った。
先生!? 演技は!?
先生はポケットからよくわからない注射器のようなものを出すと
「これはボクが独自に開発した遺伝子コードの検査薬だ。これを使えば99.8%以上の精度で血縁関係を証明できる。疑うならテストしてもいいぞ?」
と得意げに言ったところで顔が固まった。
ようやくやらかしてしまったことに気づいたようだ。
「……お前、本当に10歳か?」
「ぱ、パパー!」
演技モードに戻すがもう遅かった。
「こいつら怪しいぞ! 衛兵! こいつらを捕まえろ!」
ドアが開き、武装した兵士や騎士たちが会場へとなだれ込んできた。
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