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4.二人だけの世界
街を遊び尽くすと、私達はとりあえず元来た学校へと戻った。
夕陽が見たいと言う絵梨に付き合って屋上まで登る。
屋上へと続くドアは戸締りがしていなくて、思いの外あっさりと外に出られた。
日が傾いて、空は燃えるように赤く染まっていた。
「楽しかったね」
「そうだねぇ。これまでの人生で一番楽しかった」
屋上には今まで一度も上がったことがなかった。
施錠されてて用務員さん以外に立ち入ることができなかったから。
初めて降り立った屋上には落下防止用のフェンス柵が付いていなくて、立ち入りできないようになっていた理由がこれの所為だとわかった。
「絵梨が私がいた令和の頃にいたら、今年で31歳だってさ」
「なにそれ最悪」
「ね、最悪だよね」
私が絵梨の肩をふざけて小突くと、悪戯っぽく笑う彼女がやり返してくる。
「この世界でなら一緒に歳取れるね」
「そうだね」
私の誕生日も早くこないかな、と軽い調子で言おうとしたとき。
絵梨はいきなり私の手を取った。
「ねぇ、このまま一緒にここから飛び降りない?」
「……えっ」
すぐには言ってる事を理解できなかった。
私はかなり間抜けな声をあげた。
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