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着ている制服のデザインは同じでも、スマホじゃなくてガラケーを使ってるし、スカートの丈は異様に短く、髪型も何だか垢抜けない今時では見ないようなスタイルだ。
「……あのさ、何年生まれ?」
「平成4年生まれ」
「何歳だっけ?」
「だから14歳だってば」
「……ま、マジか」
私は青ざめた顔のまま、スマホで『平成4年生まれ』を検索してみる。
検索結果には【今年で31歳】と表示されて、上半身が仰け反った。
「ごめん、なんか混乱してきた」
両手で頭を抱えて、思わずその場で蹲る。
絵梨は鞄からペットボトルを取り出すと、私の方へと差し出した。
「まだ開けてないから、飲みな」
「……ありがと」
馴染みのある飲み物に、見覚えのないラベルが貼られていることに気づいて、私はキャップを捻りながら恐る恐る尋ねた。
「そっちって今、西暦何年なの」
「2006年」
「…………」
「そっちは?」
「……2023年」
私達はしばらくの間、黙り込んだ。
お互いに混乱しているという事だけは分かる。
「あのさ、どうしてこうなったのか覚えてる?」
恐る恐る尋ねると、絵梨は一瞬表情を強張らせた。
この状況で隠し事なんかしていても、何一つ解決出来ないのは目に見えている。
意を決して、私の方から口を開いた。
「私ね、死のうとしたの。薬を大量に飲んで……起きたらここの保健室のベッドだった」
絵梨は私の告白を聴いて、ぎゅっと自分の両手を握り合わせた。
「どうして、そうしようと思ったの」
静まり返った教室に、絵梨の呟くような声音が響く。
私は静かに話し始めた。
「友達だと思っていた子が"あの子とは友達じゃない"って言ってるの聞いちゃったんだ……同じクラスで話できるのその子だけだったから」
心では平静を保っていると思っていたのに、勝手に涙が溢れた。
ショックだったんだと、あらためて気付いた。
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