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8/終
その日初めて演奏された新曲『運命を知る』の最中、隣の人の顔を見た。聴きながら、ちょっと照れ臭そうに耳たぶを引っ張っていた。その様子をみていたら、なんだか愛おしく思えてきて、私はクスッと笑ったんだ。
あの日、あの時。
明日死んじゃっても後悔のない今を生きて、というメッセージを受け取らなかったら私は、今、どんな時間を過ごしていたのだろう。
明日死んじゃっても後悔しないように生きてみたら、たくさんの出会いと別れと再会を経験した。そして、ボケっと隣に立ってた王子さまと一緒に、同じ家に住む、なんていう未来を手にしてしまった。一緒に推しを推しながら、耳たぶを引っ張ったり、クスッと笑いながら、ミルクティーを飲んで、おいしい、幸せって思うの。
ああ、明日死んじゃっても、私は後悔しない。そんな充実した毎日。
だけど、明日死んじゃいたくない。
ずっとずーっと、こんな幸せな日々を、大好きな人たちと共に、歩んでいきたい。
〈了〉
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