湧き上がる興味

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 いやいや、私だって医療系とかの専門用語の英語は分からない。でもお客様は困っているようだ。 「What's the matter with you?」  恐る恐る声を掛けた。お客様は安心した顔で私を見た。そして身振り手振りをまじえ、何とか聞き出す事ができた。 「日本に来て食べ過ぎてしまったそうです。今日は朝からラーメンの食べ歩きをしていて気持ち悪くなったそうです」 「おー、じゃあ胃もたれに効く胃薬だね!」  店長はすぐに薬をセレクトした。そして私が英語で飲み方を説明した。お客様は満足して帰って行った。 「ありがとう。斉藤さんがいてくれて助かったよ。これから外国のお客様も増えると思うから、ずっといてくれたら有り難いな」  感染症の流行のため入国が制限されていたが、その制限が解除され外国人旅行者が増えているらしい。今日みたいに具合が悪くなった方はもちろんだが、お土産に買って帰る方も多いそうだ。 「日本の薬は優秀だからね。世界に誇れるもののひとつなんだよ」 「そうなんですか?」  そんな事も知らなかった。小さい時から当たり前にある薬。熱が出た時も頭が痛い時も、いつも治してもらった。そんな薬の事を私は何も知らない。知ろうともしなかった。  バイトの帰りに本屋に寄った。「登録販売者試験テキスト」と書かれた分厚い本を買った。家に帰りテキストを開く。呪文のようなカタカナが並んでいる。かと思えばお経のような漢字ばかりの漢方薬のページもあった。  他に法律関連、医療関連のページもあった。これは資格を取る取らないに関係なく、生きていく上で役に立ちそうだ。  歌って踊れる登録販売者、じゃなくて英語も話せる登録販売者のニーズはありそうだ。  私はテキストの最初のページから読み始めた。
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