やる気の出る薬

1/2

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

やる気の出る薬

「斉藤さん、ちょっと来て!」 「また外国のお客様ですか?」 「そうなんだよ。頼むよ」 「任せてください! えっ!」  そこには中国のお客様が。 「私中国語は分かりません!」 「外国語だから一緒でしょ?」 「そんな無茶な!」  中国の方は少し英語も話せたので何とかなった。でもこれが全く英語の分からない方だったら……。  夏休みも終わり学校へ行くようになった。でもドラッグストアでのバイトは週末だけだが続ける事にした。  学校の勉強に加え登録販売者の勉強も始めた。秋に試験がある。頑張らなくちゃ。勉強のBGMは中国語講座だ。一緒に覚えてしまえ。  いつも適当に聞き流していた授業も真剣に聞くようになった。これがいつか役に立つんだと思うと聞き逃すなんてもったいない。目標ってやる気の出るお薬なのかもしれない。  薬の事を覚え始めると、自然と薬売り場に足が向いた。お客様が手に取って戻したのだろう。薬の箱が倒れていたり後ろ向きになっていた。それをきちんと揃えて並べる。ついでに裏の成分表を見る。カタカナで目がチカチカする。でもこのカタカナの名前を覚え、効果効能を覚え、副作用を覚えなければいけない。気が遠くなる……いや、オバサンにできたのだ。私にもできるはず! 「あら斉藤さん、お勉強してるの? 偉いわね」 「はい!」 「登販受けるんだって? 頑張ってね。若いんだから大丈夫よ」  先輩店員さんたちみんなが応援してくれる。これは落ちるわけにいかない。プレッシャーを感じつつ勉強に励む。テキストは1回読んだ。チンプンカンプンだった。さあ2回目に挑戦だ。それが終わったら問題集を解いてみよう。やる気だけはある。でも、カタカナ文字を見ていると睡魔が……。  テキストを2回読み終え、大分覚えてきた。でも問題集をやったらまだまだ合格点には程遠かった。テキスト3回目突入!  そんなある日。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加