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やる気の出る薬
「斉藤さん、ちょっと来て!」
「また外国のお客様ですか?」
「そうなんだよ。頼むよ」
「任せてください! えっ!」
そこには中国のお客様が。
「私中国語は分かりません!」
「外国語だから一緒でしょ?」
「そんな無茶な!」
中国の方は少し英語も話せたので何とかなった。でもこれが全く英語の分からない方だったら……。
夏休みも終わり学校へ行くようになった。でもドラッグストアでのバイトは週末だけだが続ける事にした。
学校の勉強に加え登録販売者の勉強も始めた。秋に試験がある。頑張らなくちゃ。勉強のBGMは中国語講座だ。一緒に覚えてしまえ。
いつも適当に聞き流していた授業も真剣に聞くようになった。これがいつか役に立つんだと思うと聞き逃すなんてもったいない。目標ってやる気の出るお薬なのかもしれない。
薬の事を覚え始めると、自然と薬売り場に足が向いた。お客様が手に取って戻したのだろう。薬の箱が倒れていたり後ろ向きになっていた。それをきちんと揃えて並べる。ついでに裏の成分表を見る。カタカナで目がチカチカする。でもこのカタカナの名前を覚え、効果効能を覚え、副作用を覚えなければいけない。気が遠くなる……いや、オバサンにできたのだ。私にもできるはず!
「あら斉藤さん、お勉強してるの? 偉いわね」
「はい!」
「登販受けるんだって? 頑張ってね。若いんだから大丈夫よ」
先輩店員さんたちみんなが応援してくれる。これは落ちるわけにいかない。プレッシャーを感じつつ勉強に励む。テキストは1回読んだ。チンプンカンプンだった。さあ2回目に挑戦だ。それが終わったら問題集を解いてみよう。やる気だけはある。でも、カタカナ文字を見ていると睡魔が……。
テキストを2回読み終え、大分覚えてきた。でも問題集をやったらまだまだ合格点には程遠かった。テキスト3回目突入!
そんなある日。
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