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④
あの日から二週間程経ったある日の昼休み、いつも通り休憩室でお弁当を食べていると、人のやってくる気配がして顔を上げると、稲延さんが小脇になにかを抱え、片手にコンビニ袋を持って立っていた。
「宮下さん、同席していい?」
「は、はい。どうぞ…」
「ありがとう」
私の前に座るとまず小脇に抱えていた荷物を横の空いている席に置き、コンビニ袋をテーブルに置く。そして、袋の中からサンドウィッチ・カレーパン・クリームパンの計三個を取り出しす。最後にペットボトルのカフェオレを取り出して、フタを開けて1/3程飲んで一息ついている。そんな稲延さんを目の前にして落ち着かなくなる私。いつもより食べるペースが早くなってしまう。稲延さんはいつも通りなのか食べるのが早く、二個目のカレーパンに突入中。
「食べるの早い…」
と小声で、一人言のように言った言葉が聞こえのか
「そうか?普通やろ」
と、言ってカレーパンを食べ終わって、カフェオレを飲み始め、飲みながら私を見ている。視線を感じて、落ち着かない。
「宮下さん…」
「はい?」
「食べるの遅い?」
「いえ…そんなことないとないです」
「ほんま?まだお弁当半分残ってるやん。お弁当箱小さいのに」
「普通です…」
ちょっとむっとして返事をした。そんな私のことなんかお構いなしに、じーっとお弁当のおかずを見て、指をさす。
「なぁ、お弁当のおかず、卵焼き貰ってもいい?」
「ええっ?」
「砂糖入ってる?」
「は、入ってません」
「うん。それやったら大丈夫!貰ってもいい?」
「はぁ…分かりました」
マイペースな稲延さんに呆れて、私はお弁当のフタに卵焼きを一つのせて
「はい」
と稲延さんに渡した。
「ありがとう」
そう言って、指で摘まんで、口の中に入れて暫しもぐもぐする彼。
「うん、おいしい!」
うん、うん、と頷く。
「あ、ありがとうございます…あの…おうどんのスープの素使ってるので、よっぽどのことがない限り失敗しません」
「まぁ、そんなん言わんと…って、あっ、これ卵焼きのお礼に…はい、どうぞ」
横の空いている席に置いた荷物を手に取って、ひょいっと私に渡して、手付かずのサンドウィッチと飲みかけのカフェオレのペットボトルをコンビニ袋に入れてから席を立つと、
「じゃ、また、宮下さん」
と言って、休憩室を出て行った。
荷物を私に渡してから休憩室を出て行くまでの彼の行動が早すぎて、お礼が言えなかったことにがーん…と暫し落ち込む。
我に返った時、午後の始業時間まで余裕がなく、残りのお弁当を急いで食べて、休憩室を後にした。
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