博士と僕

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 博士が両手で鼻をものすごくかいている。こんな光景は初めて見た。鼻がとても痛そうだ。余程気まずいことがあるのだと勘づいた。 「薬の効果を言ったら必ず飲んでくれるのか?」 「はい。必ず飲みます」 「仕方ない。教えてやろう」  博士が鼻をかくのをやめて、目尻を下げて悪い顔をした。口元に悪魔のような笑みが溢れている。 「なんでも言うことを聞いてくれる私の助手になる薬だ」  僕はその言葉を聞いて驚き心底恐怖した。 「そんなの飲むわけないじゃん!」 「さっき効果を話したら必ず飲むと言ったよね。嘘をつくのか?」 「助手が辞めるのも当然ですね。僕はもう帰ります!」  博士が走り寄り、あわてて深々と頭を下げた。 「悪かった。君に失礼なことをした。もう帰っていいが最後に一つだけお願いを聞いてくれないだろうか?」 「うーん、何でしょうか?」  博士が別の黒い液体が入った三角フラスコを取り出した。 「この薬を一口だけでいいから飲んでくれ。痺れて動けなくなるから。ただの普通の痺れ薬だから大丈夫だ」 「痺れ薬を飲ませてから紫の液体を飲ませるつもりでしょ!」 「正解だ! よくわかったな。助手採用試験に合格だ。君を今日から正式に私の助手に……」  博士が言い終わる前に僕は博士のほっぺたをむにゅと摘んで帰った。もう二度と来るもんか!
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