博士と僕

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 博士のほっぺたを摘んで研究室を去った翌日、博士から電話があった。どうしても来て欲しいと言われて仕方なく行った。 「来てくれてありがとう。今日は人類史上最高の薬を飲ませてやる」 「もう実験はこりごりですよ。また怪しい薬を作ったのですか?」  博士が高らかに天を仰いで笑った。博士がピンク色の液体が入った三角フラスコを差し出した。 「前回とは次元が違う薬を作った。君に飲ませてあげよう」 「今回の薬の効果は何ですか?」  博士が勿体ぶってゆっくりと声を出した。 「ずばり透明人間にさせる薬だ!」  僕の頭の中でさまざまな疑問符が舞った。 「えっと、いろいろ気になりますが、まず透明人間になる薬ではなく、透明人間にさせる薬なんですか?」 「透明人間になる薬は残念ながら作れなかった。しかし、わしはその薬を飲んだ本人の視界に入った人間を透明人間にさせる薬を作り出したんだ」 「博士、それだと僕が会う人、みんな透明人間になって大変なことになりますよ!」 「細かいことは気にするな。さあ、早く飲んでくれ」 「どうしてもですか?」 「どうしてもだ」  僕は腕を組んで考えた。もしかしたら博士が透明人間になりたいだけなんじゃないだろうか。僕は博士がものすごく鼻をかいているのを見過ごさなかった。 「僕が薬を飲むと真っ先に透明人間になるのは博士です。博士は透明人間になって何がしたいのですか?」 「君のほっぺたをむにゅと摘むに決まっているだろう」  僕はその言葉に驚いて急いでほっぺたを両手で隠した。 「博士、結構根に持つタイプなんですね」 「根に持つタイプ選手権があったらわしはシード選手じゃな」 「どんな大会ですか!」 「いいから早く飲みたまえ」 「飲むわけないじゃん。博士のバカー!」  僕は博士のほっぺたを前回と同じようにむにゅと摘んで帰った。もう二度と研究室には来ない。絶対にだ!
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