博士と僕

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 絶対に研究室には行かないと胸に誓った翌日、また博士から電話があった。博士に泣きながらどうしても来て欲しいと懇願されて行くことにした。 「よくぞ、来てくださいました。お待ちしておりました」 「いつもより言い方が丁寧ですね。どうしたんですか?」  博士がにっこりと笑う。そこにはいつもの胡散臭さがなかった。 「それはそうですよ。お客様!」 「お客様?!」 「言葉が丁寧になる薬を飲みましたから」 「既に薬を飲んでいたとは」  博士がパタリとそこで倒れた。僕はあわてて博士が起き上がるのを助ける。 「ああ、君か。君はまた性懲りも無く騙されて来たんだな。言葉が丁寧になる薬は効果が5分で切れるんだ。こんちくしょー!」 「急に荒れてますね。副作用かな」  博士が一つ咳払いをして、水色の液体が入った三角フラスコを差し出した。 「これは神すら欺く薬だ。さあ飲んでくれ」 「今回の薬はどんな効果なのですか?」 「君はいつも効果が気になるんだな。仕方ない特別に教えてやろう」  博士が口元に笑みを浮かべた。悪魔が宿っているようなぞっとする感じがした。 「ずばり時間を止められる薬だ!」  僕は前回同様、頭の中で疑問符が舞った。 「時間を止める能力がつくならわかるのですが、誰に時間を止められるのですか?」 「薬を飲んだ人間以外、全員に時間を止められる。つまり飲んだ本人だけ時間が止まっている」  僕はデジャブかなと思った。 「博士、答えがわかっていますが、念のために聞きます。僕の時間を止めてどうしたいのですか?」 「君のほっぺたをむにゅと摘んで……」 「博士のバカー!」  僕は博士が言い終わらないうちに、博士のほっぺたをむにゅと摘んで帰った。博士のほっぺたは毎日摘まれて、ちょっと赤くなっていた。  でも博士が悪いんだ。もう絶対に研究室には行かない。何があっても行かないんだ!
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