ドッペルゲンガー

10/11
前へ
/11ページ
次へ
 私の答えだけ、頭の中をグルグルと回っている。 「帰る?」 「そうだね」  私は草太兄ちゃんの横に並んで歩きはじめた。 「草太兄ちゃん」 「うん?」  信号待ちの間、私はもう一度、横須賀高校をふり返ってみた。大きな〈横須賀高校文化祭〉の立て看板が私の髪を引っ張るように思えた。まだいたい、もう少し文化祭を見て回りたい、と思っていた。 「草太兄ちゃんは、高校、後悔しなかった?」 「しなかったな。むしろ入れて良かったって思ってる」 「そう」 「カヤは……久里浜高校は、そうじゃない?」 「どうだろう」  私は草太兄ちゃんに対して思わずあいまいに答えたけれど、胸の中の答えははっきりしていた。 (高校、間違えたな)  私は、今からでも変われるだろうか。  今の高校で、花子さんや草太兄ちゃんみたいに「後悔していない」って言えるように過ごせるようなるだろうか。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加