ドッペルゲンガー

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 私は、高校デビューに失敗した。  最初こそ、明るく装ってみたけれど、化粧が当たり前、スカートはひざ上だし、髪をいろんな色に染めたキラキラな女子たちを前にしたら、私は臆病にも出おくれてしまった。今では〈地味子〉という印象が固定されている。  友だちは一人二人ならいるけれど頼りになる先輩とか先生もいない。  私が今日、この高校の文化祭に来たのは、ただの気分転換だった。そして、もしこの学校に進学していたら、という想像をしてみるのも、目的だった。  学力的に差がない、今の私の高校と、この横須賀高校。もし選択がちがったら私は変わっていたのだろうか、と。  まだ、その答えは出ていない。でも少なくとも一つ分かったことは、私にそっくりな〈花子さん〉は、この学校の人たちに大切にされている、ということだった。
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